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吭
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のど
ふりがな文庫
“
吭
(
のど
)” の例文
その刹那に運命が今一度不遠慮に我々を愚弄した。鱷は
吭
(
のど
)
をふくらませて、又曖気をした。想ふに、餌が少々大き過ぎたと見える。
鱷
(新字旧仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
「なぜ白状しないか」と叫んで玄機は女の
吭
(
のど
)
を
扼
(
やく
)
した。女はただ手足をもがいている。玄機が手を放して見ると、女は死んでいた。
魚玄機
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
媼
(
おうな
)
は忽ち身を起し、
健
(
すこや
)
かなる歩みざまして我前に來て云ふやう。能くも歌ひて、身のしろを
贏
(
か
)
ち得つるよ。
吭
(
のど
)
の響はやがて
黄金
(
こがね
)
の響ぞ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
動悸が
吭
(
のど
)
の下までしたやうなことがありましても、兎に角わたくし共はモスコエストロオムの渦巻にだけは巻かれずに済んでゐたのでございます。
うづしほ
(新字旧仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
スタニスラウスは一層居丈高になつて、
吭
(
のど
)
に
支
(
つか
)
えて眠つてゐる詞を揺り醒ますやうに、カラの前の方を手まさぐつた。
祭日
(新字旧仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
▼ もっと見る
「
吭
(
のど
)
を緊められても出す
音
(
ね
)
は変りませんよ。間は金力には屈しても、腕力などに屈するものか。憎いと思ふならこの
面
(
つら
)
を五百円の
紙幣束
(
さつたば
)
でお
撲
(
たた
)
きなさい」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
岩谷は柔道も達者で、戯れに銀子の松次を寝かしておいて
吭
(
のど
)
を締め、息の根を止めてみたりした。二度もそんなことがあり、一度は証書を書かせたりした。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
女は
死人
(
しにん
)
のような
顔色
(
かおいろ
)
になって、口を
開
(
あ
)
いたままで聞いている。男の言う事が分らない。分らせたくない。冷やかな、恐しいある物が
吭
(
のど
)
を締め
付
(
つけ
)
ているようである。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
その鳩は白くて温かで、
吭
(
のど
)
の下に丁度匕首で刺されたやうな、血痕のやうな、赤い斑を持つてゐる。
復讐
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
庚娘はにげることができないと思ったので、急いで自分の
吭
(
のど
)
を突いた。刀が
純
(
なまくら
)
で入らなかった。そこで戸を
啓
(
あ
)
けて逃げだした。十九がそれを
逐
(
お
)
っかけた。庚娘は池の中へ飛び込んだ。
庚娘
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
彼が水戸を押えて京都を圧したるが如き、あたかもこれ
吭
(
のど
)
を
縊
(
い
)
して背を
拊
(
う
)
つの政策にして、眼快ならざるにあらず、手利ならざるにあらず。
然
(
しか
)
れども彼は
自
(
みず
)
から大勢調子の外に立てり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
お
吭
(
のど
)
のお
乾
(
かわき
)
を止めてお
上
(
あげ
)
申すと云うだけではござりません。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
これから
毎朝
(
まいてう
)
鱷の
吭
(
のど
)
へ曲つた金属の
管
(
くだ
)
を插してその中からコオフイイや茶やスウプや柔かにしたパンを入れてくれると云ふ事になつた。
鱷
(新字旧仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
平生歯が出てゐたが、其歯を
剥
(
む
)
き出してゐる。次に平八郎らしい死骸が出た。これは
吭
(
のど
)
を突いて
俯伏
(
うつぶ
)
してゐる。今井は二つの死骸を水で洗はせた。
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
鶯の如き
吭
(
のど
)
ありといふ、美しき外國婦人の夜を
徹
(
とほ
)
して護り居たるに、醫者は心を勞し給ふな、
本復
(
ほんぷく
)
疑なしといひきとぞといふ。我を伴ひ來し男の云はく。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
銀子も淡い慾がないわけでもなかったが、それも棒が
吭
(
のど
)
へ
閊
(
つか
)
えたようで、気恥ずかしい感じだった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
りますから、
吭
(
のど
)
なり胸なり、ぐつと
一突
(
ひとつき
)
に
遣
(
や
)
つてお
了
(
しま
)
ひ遊ばせ。ええ、もう貴方は何を
遅々
(
ぐづぐづ
)
してゐらつしやるのです。刀の
持様
(
もちやう
)
さへ御存じ無いのですか、かうして抜いて!
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
猩々は最初いたづらをする積りであつたのに、夫人が叫びながら振り放さうとするので、獣もそれに抗抵するうちに気が荒くなつたらしい。猩々は力一ぱい剃刀で
吭
(
のど
)
を切つた。
病院横町の殺人犯
(新字旧仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
羽は滑かで、足には鱗が畳なつてゐて、
吭
(
のど
)
は紫掛かつて赤く、嘴は珊瑚色をしてゐる。皆むく/\太つてゐるのに、争つて粒を
啄
(
ついば
)
んでゐる。この卑しい餌を食ふのが得意らしい。
復讐
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
吭
(
のど
)
の天井から恐ろしい勢で
火燄
(
かえん
)
が涌き出る。11645
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
岡田が手を洗っている最中に、それまで蛇の
吭
(
のど
)
から鳥の死骸を引き出そうとしていた小僧が、「やあ大変」と叫んだ。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
鱷は先づ横に銜へてゐたイワンを口の中で、一
捏
(
こね
)
捏ねて、足の方を
吭
(
のど
)
へ向けて、物を呑むやうな運動を一度した。イワンの足が
腓腸
(
ふくらはぎ
)
まで見えなくなつた。
鱷
(新字旧仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
おん身の才と云ひおん身の
吭
(
のど
)
と云ひと、猶詞を繼がんとするを、フアビアニは押しとゞめて、止めよ/\、さる挨拶を受くることは猶不慣なるべし、紹介とやらんも最早濟みたるべければ
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
「まあ
惚
(
ほ
)
れさうに見せかけるのさ。」女は
吭
(
のど
)
で笑ひながら
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
あの方がいらっしゃると
吭
(
のど
)
を締められるようですの。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
「御膳も
吭
(
のど
)
へは通りませんから……」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
佐野さんがお蝶の
吭
(
のど
)
を切ってから、明りを消して置いて、自分が死んだのだろうと、刑事係が云った。
心中
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
死骸らしい物のある奥の
壁際
(
かべぎは
)
に、平八郎は
鞘
(
さや
)
を払つた
脇差
(
わきざし
)
を持つて立つてゐたが、踏み込んだ
捕手
(
とりて
)
を見て、其
刃
(
やいば
)
を横に
吭
(
のど
)
に突き立て、引き抜いて捕手の方へ投げた。
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
その手を
吭
(
のど
)
の下に持って行って
襟
(
えり
)
を直す。直すかと思うと、その手を下へ引くのだが、その引きようが面白い。手が下まで下りて来る途中で、左の乳房を押えるような運動をする。
心中
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「見事じゃ。とどめは己が刺す」九郎右衛門は乗り掛かって
吭
(
のど
)
を刺した。
護持院原の敵討
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
小川は
吭
(
のど
)
が乾くので、
急須
(
きゅうす
)
に一ぱい湯をさして、茶は出ても出なくても好いと思って、直ぐに茶碗に注いで、一口にぐっと
呑
(
の
)
んだ。そして着ていたジャケツも脱がずに、行きなり布団の中に這入った。
鼠坂
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
吭
漢検1級
部首:⼝
7画
“吭”を含む語句
喉吭
吭笛
吭迫
咽吭