叢生そうせい)” の例文
生垣の中にクイクイ(或いはツイツイ)の叢生そうせいしている所を見付けて、退治にかかる。この草こそ我々の最大の敵だ。恐ろしく敏感な植物。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
予の幼時和歌山で兎の足を貯え置き痘瘡をくに用いた。これその底に毛布を着たように密毛叢生そうせいせる故で予の姉などは白粉おしろいを塗るに用いた。
右の鱗片が相擁あいようしてかたまり、球をなしているその球の下に叢生そうせいして鬚状ひげじょうをなしているものが、ユリの本当の根である。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
そこにはがまや菱が叢生そうせいし、そうしてわれわれが「蝶々蜻蛉とんぼ」と名付けていた珍しい蜻蛉が沢山に飛んでいた。
郷土的味覚 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
たとい市中にあってもそれが人家の庭園に叢生そうせいする場合には、格別の値いあるものとして観賞されないらしいが、ひとたびあわびの貝に養われて人家の軒にかけられた時
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
鬱蒼うっそうたる森林地帯を通り抜けると、巌石がんせき峨々ががとして半天にそびゆる崑崙山脈にじ登って、お茶の樹を探しまわるのですが、崑崙山脈一帯に叢生そうせいするお茶の樹というのは
狂人は笑う (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一丈余りの蒼黒あおぐろい岩が、真直まっすぐに池の底から突き出して、き水の折れ曲るかどに、嵯々ささと構える右側には、例の熊笹くまざさ断崖だんがいの上から水際みずぎわまで、一寸いっすん隙間すきまなく叢生そうせいしている。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのおおきさもその色も麦の粒でも寄せたように、枝の先に叢生そうせいする大きな葉の間に咲くので、遠くから見ると、つぼみともの芽とも見分けがつかないほど、目に立たない花である。
枇杷の花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「人既ニ生ルレバ皆各其体質アリ。筋骨強堅ニシテ肩広ク胸瞠きょうどう大ニ毛髪叢生そうせいシ、膚色潤沢ニ歯整ヒかつ強ク、臓腑ク発達スルモノこれヲ強壮ノ体質トシ、之ニ反スルヲ羸弱るいじゃくノ体質トス」
呉秀三先生 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
あるいはヤすなわち蘆荻ろてきの類を叢生そうせいしている所とも説明し得るかも知れぬが、自分はやはり語原の説明の不能なるにもかかわらず、阿原のアが谷地のヤと混同したものと思っている。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
刺竹しちく叢生そうせいする風景
台湾の民芸について (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
スミレ、すなわち Viola mandshurica W. Beck. は宿根草しゅっこんそうで、葉は一かぶ叢生そうせい長葉柄ちょうようへいがあり、葉面ようめんは長形で鈍鋸歯どんきょしがある。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
カキツバタは水辺、ならびに湿地しっち宿根草しゅっこんそうで、この属中一番鮮美せんびな紫花を開くものである。葉は叢生そうせいし、鮮緑色せんりょくしょくはば広く、扇形せんけい排列はいれつしている。初夏しょかこう葉中ようちゅうからくきいて茎梢けいしょうに花をける。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)