取立とりた)” の例文
訊問じんもんすると、案外あんがいにも老人ろうじんのことを、借金しゃっきん取立とりたてがきびしくへんくつだが、面白おもしろいところのある人物じんぶつだといつたし、また借金しゃっきんのことで
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
また大蔵省から取立とりたてた内で、法王政府に属する諸官員及び僧官に俸禄ほうろく(年俸と月俸とあり)を与えなければならん。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
が、取立とりたてて春雨はるさめのこの夕景色ゆふげしきはなさうとするのが趣意しゆいではない。今度こんど修善寺しゆぜんじゆきには、お土産話みやげばなしひとつある。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
八百屋やをやきちらう大工だいく太吉たきちがさつぱりとかげせぬがなんとかせしとふにこのけんであげられましたと、かほ眞中まんなかゆびをさして、なん子細しさいなく取立とりたてゝうわさをするものもなし
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その婦人は如何いかにも忌々いまいましそうな、じれったそうな、しゃくさわると云うような風情で、身を斜めにして私の方をジロリと睨んだ顔、取立とりたてて美人と賞讃ほめはやすほどではないが、たしかに十人並以上の容貌きりょう
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しかるに御家來ごけらい天晴あつぱれ器量人きりやうじんさふらふとな、祝着しふぢやくまをす。さて其者そのもの取立とりたつるにきて、御懸念ごけねんのほども至極致しごくいたせり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くて幸豐君ゆきとよぎみもくげて、一國いつこく老職らうしよくとなさむとおもはれけるが、もとより亂世らんせいにあらざれば、取立とりたててこれぞといふてがらかれきものを、みだりにおももちゐむは、偏頗へんぱあるやうにて後暗うしろめた
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)