友仙ゆうぜん)” の例文
後刻のち學校がくかうはうぜの約束やくそく信如しんによ田町たまちあねのもとへ、長吉ちようきち我家わがやかたへと行別ゆきわかれるにおもひのとゞまる紅入べにいり友仙ゆうぜん可憐いぢらしき姿すがたむなしく格子門かうしもんそとにととゞめぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
田舎芸者の出稼ぎである二十あまりの白粉おしろいをぬった法界節屋ほうかいぶしやが、お煙草盆に、これまたまっ白にぬり立て、メリンス友仙ゆうぜん単衣ひとえを着せた三人ばかりの女の子を引率し、宿の前へ流して来たのも
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
得ずと思い出したる俊雄は早や友仙ゆうぜんそでたもと眼前めさき隠顕ちらつき賛否いずれとも決しかねたる真向まっこうからまんざら小春が憎いでもあるまいと遠慮なく発議者ほつぎしゃり込まれそれ知られては行くもし行かぬも憂しとはらのうちは一上一下虚々実々
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
信如しんによいまさびしうかへれば紅入べにい友仙ゆうぜんあめにぬれて紅葉もみぢかたのうるはしきがわがあしちかくちりぼひたる、そゞろにゆかしきおもひはれども、とりあぐることをもせずむなしうながめておもひあり。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此下駄このげた田町たまちまでことかといまさら難義なんぎおもへども詮方せんかたなくて立上たちあが信如しんによ小包こづゝみをよこに二タあしばかり此門このもんをはなれるにも、友仙ゆうぜん紅葉もみじのこりて、てゝぐるにしのびがた心殘こゝろのこりして見返みかへれば
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)