卵子たまご)” の例文
火鉢でじいじいとためてくれるハムの味、卵子たまごのむし方、こうのもの、思い出してよだれが出るのだから、よっぽど美味かったのに違いない。
朝御飯 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
昭和九年九月十三日頃南洋パラオの南東海上に颱風たいふう卵子たまごらしいものが現われた。それが大体北西の針路を取ってざっと一昼夜に百里程度の速度で進んでいた。
颱風雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「半焼けの米櫃こめびつ、焼け米、そこらを掘ると、卵子たまごが出てくる筈だ。みんなこの際、立派な食料品だ」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
平板にげた岩石が、散乱している、嘉代吉は偃松の下で、破れ卵子たまごを見つけ、足の指先で雷鳥の卵子だと教えてくれた、この尾根の突角で、深い谷を瞰下しながら、腹這いになり
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
尤もあの辺には蛇や蛙がたくさん棲んでいますから、自然その卵子たまごがどうかしてはいり込んで南瓜や西瓜のなかで育ったのでしょうな。しかし西瓜が女の生首に見えたなぞは少し念入り過ぎる。
西瓜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かゝる孤島はなれじまことだから、御馳走ごちさういがと大佐たいさ言譯いひわけだが、それでも、料理方れうりかた水兵すいへい大奮發だいふんぱつよしで、海鼈すつぽん卵子たまご蒸燒むしやきや、牡蠣かき鹽煑しほにや、俗名ぞくめう「イワガモ」とかいふこのしま澤山たくさんかも
しかし先ず智育よりも体育よりも一番大切な食育の事を研究しないのは迂闊の至りだ。動物を飼ってみると何より先に食育の大切な事が解る。とりを飼っても食物がるければ卵子たまごを沢山産まない。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
詩人と画家とその卵子たまごたちが、きゅうを負って集まる桃源境アルキャデアなのだ。
巨大なる黄金わうごん卵子たまごの如し。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
うっかりかったくされ卵子たまご
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
獅子狩しゝがりんでも十幾遍いくへんもようされたがいつ武村兵曹たけむらへいそう大功名だいこうめうであつた。またあるとき海岸かいがんいへうしろもりへ、大鷲おほわしいとなんでるのを見付みつけて、その卵子たまごりにつてひど遭遇でつくわしたこともある。