南蛮寺なんばんじ)” の例文
ある春のゆうべ、Padre Organtino はたった一人、長いアビト(法衣ほうえ)のすそを引きながら、南蛮寺なんばんじの庭を歩いていた。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
南蛮寺なんばんじおくのほうから、ジャン、ジャン、ジャン! 妖韻よういんのこもったかね——そして一種の凄味すごみをおびたかいがひびいてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
切支丹の邪宗じゃしゅうを禁じて南蛮寺なんばんじこぼった豊臣秀吉の遺策を受け継いだ幕府では、オランダ人からポルトガル人に領土的野心があると云う密書を得てからその禁止に全力を傾けた。
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
南蛮寺なんばんじの謎! いや恐らくあるだろう、解くがいい解くがいい! 幸福が来る、解いた者へは! だが受難も来るだろう! だが受難を避けてはならない! どんなものにも受難はある。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
但風俗は必しも史実にらず、却つて今人の眼に親うするものとす。秋の日、暮がた。後景は京都四条坊なる南蛮寺なんばんじの高き石垣。そが中ほどよりやや上手に寄りて門。その扉開かれてあり。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
三十分ののち、彼は南蛮寺なんばんじ内陣ないじんに、泥烏須デウスへ祈祷を捧げていた。そこにはただ円天井まるてんじょうから吊るされたランプがあるだけだった。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
使者は四条坊門の南蛮寺なんばんじを訪れて、永禄えいろく以来日本に来ている宣教師せんきょうしオルガンチノをれてふたたび信長の陣所天野山へ帰った。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その鷲の背にありとみえた両童子りょうどうじこそ、まぎれもあらず、南蛮寺なんばんじの丘からムシャブリついて飛びあがった、鞍馬くらまの竹童——泣き虫の蛾次郎がじろう
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
巴毗弇は当初南蛮寺なんばんじに住した天主教徒であったが、その後何かの事情から、DS 如来でうすにょらいを捨てて仏門に帰依きえする事になった。
るしへる (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
まだ信長の世に時めいていたころは、長崎ながさき平戸ひらどさかいなどから京都へあつまってきた、伴天連バテレン修道士イルマンたちは、みなこの南蛮寺なんばんじに住んでいた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここは南蛮寺なんばんじの堂内である。ふだんならばまだ硝子画ガラスえの窓に日の光の当っている時分であろう。が、今日は梅雨曇つゆぐもりだけに、日の暮の暗さと変りはない。
おしの (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
少くとも、南蛮寺なんばんじ泥烏須如来でうすによらい礼拝らいはいする奉教人ほうけうにんあひだには、それが疑ふ余地のない事実だつたと云ふ事である。
悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
と告げて、一夜ひそかに、城を出て、南蛮寺なんばんじはしりこんだ。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
のみならず次第に衰弱する。その上この頃は不如意ふにょいのため、思うように療治りょうじをさせることも出来ない。聞けば南蛮寺なんばんじの神父の医方いほう白癩びゃくらいさえ直すと云うことである。
おしの (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「きれいな鳥籠持って、南蛮寺なんばんじんさんが通るよ」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うるがんは或日のゆふべ南蛮寺なんばんじの門前で、その姫君の輿こしの上に、一匹の悪魔が坐つてゐるのを見た。が、この悪魔はほかのそれとは違つて、玉のやうに美しい顔を持つてゐる。
悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
南蛮寺なんばんじ
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
南蛮寺なんばんじのパアドレ・オルガンティノは、——いや、オルガンティノに限った事ではない。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その内に神父は祈祷をやめると、やっとゆかから身を起した。見れば前には女が一人、何か云いたげにたたずんでいる。南蛮寺なんばんじの堂内へはただ見慣れぬ磔仏はりきぼとけを見物に来るものもまれではない。
おしの (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その故は、われ、昔、南蛮寺なんばんじに住せし時、悪魔「るしへる」をのあたりに見し事ありしが、彼自らその然らざることわりを述べ、人間の「じゃぼ」を知らざる事、おびただしきを歎きしを如何いかん
るしへる (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)