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初更
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しよかう
初更に
至るや、
病める
妻なよやかに
起きて、
粉黛盛粧都雅を
極め、
女婢をして
件の
駿馬を
引出させ、
鞍を
置きて
階前より
飜然と
乘る。
初更の頃、
甲板の長椅子に
居り
候に、オルレアンやツウルあたりの野の
雛罌粟の花の盛りの目に見え
候うて私は泣き申し
候ひき。
尤もわたしが
搦め
取つた
時には、
馬から
落ちたのでございませう、
粟田口の
石橋の
上に、うんうん
呻つて
居りました。
時刻でございますか?
時刻は
昨夜の
初更頃でございます。
風に
揉れて暮したり
漸く五日の
申の
下刻に及び少し風も
靜まり浪も
稍穩かに成ければ
僅かに
蘇生の心地して
悦びしが間もなく其夜の
初更に再び
震動雷電し
颶風頻りに
吹起り以前に
倍して
強ければ
船は