入牢じゅろう)” の例文
その代り、みなもその覚悟してな、入牢じゅろうの腹を決めて下されな。わしも、ことによっては、磔にでもなんでもなる覚悟をするけにな。
義民甚兵衛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
町「はい……おのれ蟠龍軒、よくも我が父を殺せしよな、おのれ如き畜生のために永い月日の艱難苦労、旦那様は入牢じゅろうまで致したぞよ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私が彼奴を縛って行くのは雑作ぞうさもありませんが、あいつが入牢じゅろうして吟味をうける。兇状が決まって江戸じゅうを引き廻しになる。
半七捕物帳:03 勘平の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
なぞと、うそにも陰口をきこうものなら、下民の分際をもって、上ご政道をとやかく申せし段ふらち至極とあって、これがまず入牢じゅろう二十日。
知ってし隠しに隠していた。しかし何の罪によって入牢じゅろうしたかは、誰も教えてくれなかった。無論これ程の大罪とは知る由もなかったのだ。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼の属するアウグスチノ会のグチエレス長老が、その前年に捕えられて入牢じゅろうしておったが、まず次兵衛は竹中采女うねめの別当に雇われることに成功した。
吟味中ぎんみちゅう入牢じゅろう仰付おおせつくといい渡された時には歌麿は余りのことに、あやう白洲しらす卒倒そっとうしようとしたくらいだった。
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
入牢じゅろう申しつける——という法的な言明が下されるのでなければ、獄に繋ぐことはできない。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こいつの凌辱りょうじょくを蒙った無惨な尼たちが幾人あるか知れない——そのうちに、露見し、捕手二人を傷つけたが、ついにからめ取られて入牢じゅろうの身となったのが、安政年間だとかいうこと。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と国貞は声を沈まして、忘れもせぬ文化三年の春のころ、その師歌川豊国うたがわとよくにが『絵本太閤記えほんたいこうき』の挿絵の事よりして喜多川歌麿きたがわうたまろと同じく入牢じゅろうに及ぼうとした当時の恐しいはなしをし出した。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
入牢じゅろう、追放、欠所けっしょ、手錠に処せられた、大町人、役者、芸人の数もすくなくはありませんが、木場の増田屋惣兵衛などは最も手ひどい目に逢った一人で、町奉行鳥居甲斐守に睨まれて入牢
礫心中 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
持上げられるだけ持上げられても、其実入牢じゅろうさせられたも同様で有った。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
その明くる日、霊岸島の米問屋三島の店から後家のお糸と番頭の由兵衛が奉行所へ呼び出されて、すぐに入牢じゅろうを申し渡された。
半七捕物帳:20 向島の寮 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
進んで入牢じゅろうを急ぐ子どもたちと、喜んで牢を放たれるきょうだいたちが、右門のそでの陰でさびしく笑顔えがおを送り合いました。
この暗黒の入牢じゅろう中にカサ頭になり、ビッコになつた。滑稽なる姿を終生負はねばならなかつたが、又、雄渾なる記念碑を負ふ栄光をもつたのだ。かういふ義理堅いことをやる。
黒田如水 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
此の訴訟をお採上とりあげになりませんとわたくしの一命にかゝわりますと申したので、お採上げになって、直に松右衛門まつえもんの手で腰縄をかけさせまして入牢じゅろうと相成り、年寄へ其の趣きを届け
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
江の島の巫女みこ殺しも、みな、郁次郎殿の所業しわざと睨まれ、ご本人もまた、それに相違ないと自白をなされて、昨日、江戸表へ差し立てと同時に、南町奉行所の仮牢へ入牢じゅろうなされました
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何でも、村の貧しいお百姓達が、御年貢を収めないので、庄屋殿が入牢じゅろうしている。
奉行と人相学 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
勿論もちろんこの拷問ごうもんの苦痛に堪へかね偽りの申立を致候事なれど、いづれに致せ、賽銭を盗み候儀は明白に御座候間、そのまゝ入牢じゅろうと相きまり候処、十日ばかりにて牢内において病死致候。
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それと知って、彼がおどろいて江戸へ引っ返したのは、次郎左衛門が入牢じゅろうののちであった。彼は主人の行く末を見とどけて、ふたたび佐野へ泣きに帰った。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
はめ込み女衒ぜげんのだまし罪ゃ入牢じゅろうと決まってるんだ。ついでにふたり、伝馬町へ涼ましに送りますぜ
この暗黒の入牢じゅろう中にカサ頭になり、ビッコになつた。滑稽なる姿を終生負はねばならなかつたが、又、雄渾なる記念碑を負ふ栄光をもつたのだ。かういふ義理堅いことをやる。
二流の人 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
天下の町人と云うかどで見附から町奉行まちぶぎょうへ引渡しになって、別にとがはないが、天下の飾り道具を持出した廉で吟味中入牢じゅろうを申し付けると云うので、暮の廿六日に牢ゆきになりました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
殿でんノ法印の献言で、新政府では、発行早々とかく市民の間で軽侮されている楮幣の流用と絶対価をここで徹底させるため、楮幣拒否のかどで捕えた入牢じゅろう中の者をみな、見せしめのため
以て単に文化二年の事件に坐して三日間入牢じゅろうしたるが故のみとなさずむしろ多年婦人美の追究にその健康を破壊したるがためならんと思惟しいしその秘戯画については殊に著者独特の筆をふるつて叙述の労を
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
今から二十年ほど前に、和泉屋の番頭勇蔵が入牢じゅろうした。それは紀州家か尾張家かへ納めた品々に、何か不正のことがあったと云うのである。その吟味中に勇蔵は牢死した。
半七捕物帳:68 二人女房 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
入牢じゅろうしている人の愛惜の品々がそっくりしている書斎。たぶんその人が死刑になれば魂魄はここへもどってきて、今私の坐してるフトンに坐って机に向うに相違ないような気がする。
明日は天気になれ (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「実は、拙者の友人で、土肥八十三郎どいやそさぶろうという者が、ちと嫌疑をうけて、入牢じゅろうした」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さてお話二つにわかれまして、の喧嘩の裁判は亥太郎が入牢じゅろうを仰せ付けられ、翌年の二月二十六日に出牢致しましたが、別にとがはないから牢舎ろうやの表門で一百の重打おもたゝきと云うので、むしろを敷き
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
入牢じゅろうは何日と何日でござる」
お紺の亭主はなんにも知らないというので、この事件に関する重い仕置を免かれたが、平生の身持よろしからずという罪名のもとに、入牢じゅろう百日の上で追放を申し渡された。
半七捕物帳:23 鬼娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
甲「うむ、吟味中入牢じゅろう申し付ける」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
入牢じゅろうさせてあります」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は入牢じゅろうのままで裁判の日を待っているのであった。その係りの吟味方は秋山嘉平次である。
真鬼偽鬼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
豐「吟味中入牢じゅろう申し付ける」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何さま逞ましげな悪戯いたずら小僧ではあるが、まだ十五六の小坊主が百両の金を奪い、あわせて羽織まで剥ぎ取ろうとは思えないので、彼は吟味の済むまで入牢じゅろうを申し付けられた。
半七捕物帳:27 化け銀杏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
吟味中入牢じゅろう申付ける、權六
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
安蔵寺に泊まっていた四人、その三人は住職の駕籠について行き、一人は江戸に残っていましたが、いずれも召し捕って入牢じゅろう申し付けられ、その中で二人は牢死、二人は遠島になりました。
半七捕物帳:25 狐と僧 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
覚光も一旦は入牢じゅろう申し付けられ、日本橋にさらしの上で追放になりました。
半七捕物帳:21 蝶合戦 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
去年の冬から百日あまりの入牢じゅろうが一種の懲戒処分であった。
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)