元寇げんこう)” の例文
すなわちあまり熟睡をするなという意味としか思われぬので、私は直ちに元寇げんこう刀伊といの乱等の、昔の悲惨な記念かと空想していたのである。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
これこそ、われ等の母国日本にとって、第二の元寇げんこうである。この大敵と戦わねばならぬ末山聯合艦隊は、はたして、どこにいるのだろうか。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
北條時宗むかえ撃って大いにこれやぶったことは、およそ歴史を知るほどの人は所謂いわゆる元寇げんこうえき」として、たれそらんじている所である。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「この八幡さまといい亀山上皇といい、此処へ来ると何うやら遠い元寇げんこうの昔を偲びますね。もっと歴史に精しいと面白いんでしょうけれども」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
元寇げんこうを思え、太閤の征韓の役を想え、ことごとくわれらの祖、日本人の身を以て行なった事ではないか、銃砲は十町先を射つことができるかも知れぬ
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
元寇げんこうの折、時宗公が元の使いを斬り、また遠くは高麗こま百済くだらの無礼なる使者を斬ったというような異国との断絶には当然いくらもあり得ることだが……
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
スワこそ、バッテイラで乗込んで来るぞ、うかうかしていた日には、元寇げんこうに於ける壱岐いき対馬つしま憂目うきめをこの房州が受けなければならぬ。用心のこと、用心のこと。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかし、北条氏は、元寇げんこうの乱ののちに、不満をいだいている武士に討たれて、ついに一三三三年に亡んだ。権力は一時、天皇後醍醐に移った。しかしながら、天皇に人心は帰さなかった。
胸のあたりは北風の吹き抜けで、肋骨ろっこつの枚数は自由に読めるくらいだ。この釈迦がたっとければこの兵士もたっといと云わねばならぬ。むか元寇げんこうえき時宗ときむね仏光国師ぶっこうこくしえっした時、国師は何と云うた。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
くだって、元寇げんこうの変に、相模太郎時宗さがみたろうときむねをして、一剣護国の難にあたらせ、民ことごとくの憤怒が、筑紫つくし大捷たいしょうとなった時の如きは、それの最も歴然たるものだ。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
元寇げんこうの役があった、そのとき執権時宗は、なにがしとかいう禅僧のところへいって、大事到来せり、いかんか向前こうぜんせんと訊いた、禅僧某はかねて時宗の師家だったが、問いに対して、迷惑すべからず
余輩も新派の芝居というものの代表的なやつをまとめて見たのは多分これが初めてであったろうと思う年齢は十四五であったと思う、当時神田の三崎町には元寇げんこうえきか何かのパノラマ館があったり
生前身後の事 (新字新仮名) / 中里介山(著)
中頃、後鳥羽院ごとばいんの武者所に勤番し、承久ノ乱にも宮方、元寇げんこうらんにも、率先そっせん、国難にあたってきた。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なお、元寇げんこうの国難のような場合では、なおさら、時の先達せんだつは、民の多くのものの憤怒を身に具足し、民の中に懦民だみん怯民きょうみんを、羅刹らせつの鞭をもて打つことでもなしあたわないわけはない。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
元寇げんこうの国難も、はや四十年の昔とすぎておりますが、蒙古再来のおびえはいまだに失せておりません。そのため九州探題の下には、博多警固番をおかれ、常時、沿海の防禦にそなえておりまする。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
国に国難がおこれば、元寇げんこうの折の時宗ときむね世人せじんの胸によみがえって来よう。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よく民になつかれて、民治と仁政に心した三代の名主北条泰時、武門のつつしみを知って、宗教や学問を振わせた五代の最明寺時頼、また、元寇げんこうの国難の日をよく耐え凌いだ八代北条時宗——。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中興のひと北条泰時やすときの善政、最明寺時頼さいみょうじときよりの堅持、また、元寇げんこうの国難にあたった相模太郎さがみたろう時宗などの名主めいしゅも出て、とまれ、北条家七代の現執権高時の今にいたるまで、南北の六波羅探題以下、評定衆ひょうじょうしゅう
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
海面で岩松の船手が、敵の大船列へ突ッこんで、元寇げんこうえきさながらの船戦ふないくさを展開して、いくぶんの牽制けんせいはしていたものの、ここの干潟合戦ひがたがっせん咆哮ほうこうは、いつ果てるともみえない死闘の揉み合いだった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、総じてここらは、元寇げんこうえきの遺跡だった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)