人垣ひとがき)” の例文
笠森かさもりのおせんだと、だれいうとなくくちからみみつたわって白壁町しろかべちょうまでくうちにゃァ、この駕籠かごむねぱなにゃ、人垣ひとがき出来できやすぜ。のうたけ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
と、人垣ひとがきをなして、何か、わいわい騒いでいる群れがある。ケケケケコッ……と軍鶏しゃものするどいなき声もする。
記憶おぼえのよければ去年こぞ一昨年おととしとさかのぼりて、手振てぶり手拍子てびやうしひとつもかはことなし、うかれたちたる十にんあまりのさわぎなれば何事なにごとかどたちちて人垣ひとがきをつくりしなかより。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかし徐々に激昂げっこうしていった。あとからやって来る人々は、何にも見えないのをじれて、人垣ひとがきに隠されて危険の度が少ないだけに、なおいっそう挑戦的だった。
その間隔はたった十人か十五人位の人垣ひとがきによって押し隔てられているのですが、親も子の傍へ来ることが出来なければ、子も親の側へ寄って行くことも出来ない。
其方そのかたさしてあゆむ人はみな大尉たいゐかうを送るの人なるべし、両国橋りやうごくばしにさしかゝりしは午前七時三十分、や橋の北側きたがは人垣ひとがきたちつどひ、川上かはかみはるかに見やりて、みどりかすむ筑波つくばの山も
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
全く一坪館の前は人垣ひとがきをつくっていて、中で働いているはずの源一の顔も見えなかった。
一坪館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今まで得々と弁じ立てていた当の老人は、顔色を失い、意味も無く子路の前に頭を下げてから人垣ひとがきの背後に身をかくした。まなじりを決した子路の形相ぎょうそうが余りにすさまじかったのであろう。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
すこしもながく、おせんをめておきたい人情にんじょうが、たがいくち益々ますますかるくして、まるくかこんだ人垣ひとがきは、容易よういけそうにもなかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
春重はるしげのまわりには、いつか、ぐるりとはだか人垣ひとがき出来できていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)