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ひとまへ
長吉のわからずやは
誰れも
知る
亂暴の
上なしなれど、
信如の
尻おし
無くは
彼れほどに
思ひ
切りて
表町をば
暴し
得じ、
人前をば
物識らしく
温順につくりて
「
他へは
行くんぢやねえぞ、えゝか、よきは
泣かさねえやうにしてんだぞ」
彼はおつぎへもいつて
出た。おつぎは
其麽注意を
人前でされることがもう
耻かしく
厭な
心持がするやうに
成て
居た。
空蝉の
世の
中すてヽ
思へば
黒染に
袖の
色かへるまでもなく、
花もなし
紅葉もなし、
丈にあまる
黒髮きり
拂へばとて
夫れは
見る
目の
菩提心、
人前づくりの
後家さまが
處爲ぞかし
貴君は
私に
思ふ
事があるだらうと
察して
居て
下さるから
嬉しいけれど、よもや
私が
何をおもふか
夫れこそはお
分りに
成りますまい、
考へたとて
仕方がない
故人前ばかりの
大陽氣