いっ)” の例文
咎立とがめだてをしようといっても及ぶ話でないとあきらめて居ながら、心の底には丸で歯牙しがに掛けずに、わば人を馬鹿にして居たようなものです。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そのとき歌ちゃんといわれた芸妓は貞之進の方を向いて、あなたにも上ましょうかといったこそ幸い、飛附たいほど貰いたかったがそれも手が出ない。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
爾思うと心の所為せいかアノ死顔も何だか其頃見た事の有る様な気がするテ、だからして何は兎も有れ己は先ず其女を捕えようと思うのだ、名前は何とかいったッけ
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
ことに最後の夜の如きは、愚痴ッぽい事をいっ消失きえた、あまり不思議だから女房は翌日、牢番に次第を物語った、すると死刑になる囚人には、折々ある事だ願ってみろといわ
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
愈々いよいよ原にかかると風が強い。雪の上はもう堅くこごっていた。道といっても、誰もわざわざ踏んで付けた道でなく、自然に人が歩いてかすかに付いている飛び飛びの足跡を捜して歩くのだ。
北の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ストーヴの上へ額をかけるが「ミッスルトー」という額はいかがです、あれは人によると嫌いますがちょっと御覧に入れましょうといって持って来て見せた。何でもない裸体画の美人だ。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「何いってやんでい。溝ッ蚊女郎。」と捨台詞すてぜりふで行き過るのを此方も負けて居ず
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかしその近くで芝居をして居るからといって見ようともしない、どんな芝居をやって居るとも噂にもしない、平気で居ると云うような家風でした。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
おゝ呉れと二度言わせて渡したのを、彼男は眼を皺めて見て、それじゃア歌ちゃんかといって、あはゝアと面白くもないことを声高に独り笑って居た。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
... 忘れてさ、今度は能く覚えて行う、其生田さんの居る所は何所どことかいったッけなア」下女は唯此返事一つが己れの女主人には命より大切なる秘密と知らず易々やす/\と口にいだ
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
◎先年伊勢いせへ赴き、二週間ばかり滞在した事があった、ある夜友人に招かれて、贄崎にえさき寿楼ことぶきろうで一酌を催し、是非ぜひ泊れといったが、少し都合があって、同所を辞したのは午前一時頃である
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
広瀬淡窓ひろせたんそうなどの事は、彼奴あいつ発句師ほっくし、俳諧師で、詩の題さえ出来ない、書くことになると漢文が書けぬ、何でもないやつだといって居られました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
彼の右隣の男は、今や十二分に酩酊めいていで、オイといっ猪口ちょくをその芸妓にし、お前の名は何と云う、名札を呉れ名札をと、同じことを二つ重ねて問懸けた。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
検査官が推返おしかえして決して人違いで無いと答えますとそれでは何のかどで捕縛しますと問返しました、オイ何の廉などゝ其様な児供欺こどもだましをいっても駄目だめだよ其方の伯父おじうした
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
三膳出しましたといって、かえってこの男をあやしんだ、ここおいてこの男は主人の妻子が付纏つきまとって、こんな不思議を見せるのだと思い、とてのがれぬと観念した、自訴じそせんととっえす途上捕縛ほばくされて
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
夫も宿所の二階から一足も外へ蹈出さずに探り究めたのです(荻)夫では先ず名前から云うが好い(大)イエ名前をさきいって仕舞ては貴方が終りまできかぬからいけません先ずお聞なさい
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
かといっ生真面目きまじめの町人でも無い何うしても博奕など打つ様ななまけ者だ
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)