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主家
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しゆか
掛なば兄弟の
命は
助る共嘉川の家は
滅亡ならんにより此上は最早是非もなし心に
染ぬ事なれ共
佐十郎郷右衞門ら兩人を
罪に
落し
主家の滅亡を
救はんと
據ころなく
愚案を
それが
或事情の
爲めに
明言する
事も
出來ず、さりとて
主家の
大難を
知らぬ
顏に
打※るにも
忍びで、かくは
縁起話に
托言けて、
其夜の
出發を
止めたのかも
知れぬ。と
語つた。
思はざりき、
主家仆れ
城地亡びて、而かも一騎の
屍を其の
燒跡に留むる
者なからんとは。
女中頭は
主家に帰つて来た。そしてもぢもぢしながら口を切つた。
平和の時こそ、供花燒香に經を飜して、
利益平等の世とも感ぜめ、祖先十代と己が半生の歴史とを
刻みたる
主家の運命
日に
非なるを見ては、眼を過ぐる
雲煙とは瀧口いかで看過するを得ん。
請出す事も
叶はず一日々々と申
延置候
中彼方にては流れ買に
賣拂ふと申事に御座候然るに十八ヶ年以前
國許に在し時同家中の新藤市之丞と申者
若氣の
過失にて同藩の娘と不義に及びし
事役人共の耳に
入主家の法に依て兩人とも一命を