上梓じょうし)” の例文
近日帰国の上ライプチヒで上梓じょうしする運びとなっているから、今さら訂正等のことはいい出してくれないようにとの申し込みに接した。
いっそ上梓じょうししようか。どうしたなら親元からたくさんの金を送ってもらえるか、これを一冊の書物にして出版しようと考えたのである。
ロマネスク (新字新仮名) / 太宰治(著)
佐川藤太とうたという者が補筆して上梓じょうししているし、この他にも、享和三年に平賀梅雪著の二島英雄記という十巻ものの院本が出版されている。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は新聞の広告に依って、ふと、『坂下鶴吉の告白』なる一書が、ある弁護士の努力に依って、上梓じょうしされたのを知りました。
ある抗議書 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
一先ず作者はこれを『石狩川』の初編として上梓じょうしし、つづいて、これら移住士族のその後の過程を書き進める予定である。大方の叱正しっせいを期待する。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
その遺稿がまとめられて、この春、文求堂から上梓じょうしされたのである。清末の碩儒せきじゅで、今は満洲国にいる羅振玉らしんぎょく氏がその序文を書いている。その序にいう。
斗南先生 (新字新仮名) / 中島敦(著)
未だいくばくならぬに、竜池はまさ刑辟けいへきに触れむとしてわずかに免れた。これは女郎買案内を作って上梓じょうしし、知友の間にわかった事が町奉行の耳に入ったのである。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そのいずれが良いか、たぶんこの書が上梓じょうしされるころは興味の深い話題となっていることであろう。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
……この海賊的行為のため、故国で入獄の憂目を見たと伝えられるオッペルト自身が、臆面もなく当の事件を解明上梓じょうしするが如きは、実に言語道断の沙汰さたといわざるを得ない
撥陵遠征隊 (新字新仮名) / 服部之総(著)
上梓じょうしに際して、最初に出来上った一本を岡村君の霊前に捧げて、生前の厚情にむくいたい。
「古琉球」改版に際して (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
本篇の上梓じょうしに際し、江戸川・甲賀の両氏から序文を賜わったことと、更に、松野氏の装釘に対する苦心——探偵小説としては、恐らく空前の豪華版であろうが——以上の三氏には
もっともこの速記本の上梓じょうしされたは明治十七年、作者四十六歳のみぎりであるから、すこんからんと派手に画面の大見得を切った芝居噺のころの構成とはよほど異なっていることだろう。
上梓じょうしするに当って編次を改め、すべてを訂正増補し、各篇を一層有機的に結んだ。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
今度、もと岩波書店でおなじみの小山二郎おやまじろう君が、新たに出版業をはじめるというので、この機会にこれらの短文を集めて小冊子を、同君の店から上梓じょうしするようにしないかとすすめられた。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そういう時節じせつに、僕がこの本を上梓じょうしすることが出来たのは、たいへん意義のあることだと思う。この本は、良きにも悪しきにも、科学小説時代を迎えるまでの捨て石の一つになるであろう。
『地球盗難』の作者の言葉 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わたくしの友人佐藤春夫さとうはるお君を介して小山おやま書店の主人はわたくしの旧著『すみだ川』の限定単行本を上梓じょうししたいことを告げられた。今日こんにちの出版界はむしろ新刊図書の過多なるに苦しんでいる。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
自手授いわく、此県令山本大膳上梓じょうし蔵五人組牒者、而農政之粋且精、未之者也、汝齎‐帰佐倉、示諸同僚及属官、可以重珍也、予拝伏捧持而退、既而帰佐倉、如
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
普通の辞書にはあかめがしわに梓字を当てて、版木はんぎに使われるとある。上梓じょうしとか梓行とかいうのはそれであろうか。そして見ればむこうでいう梓はあかめがしわかとも思われる。牧野さんはまたいう。
新たに『おばけの正体』の書名の下に上梓じょうしするに至る。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
それにまつわる私の空想を自由に書きつづり、「新釈諸国噺」という題で一本にまとめて上梓じょうししようと計画しているのだが、まず手はじめに
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
錯誤さくごなどもただして、さらに筆を加えなければなりませんので、研究目的は果たされたわけですが、まだこれを上梓じょうしするまでには整っておりません。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
岩波の文庫のものはその絶版のままになっていたが、その後(昭和十八年)聖紀書房という書肆しょしから歴史物集として上梓じょうしされたのがこの改訂版の最初であった。
わたくしはこの正保二年に出来て、四年に上梓じょうしせられた「屋敷附」より古い「武鑑」の類書を見たことがない。くだって慶安けいあん中の「紋尽もんづくし」になると、現に上野の帝国図書館にも一冊ある。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
これらの焼失紛失は、沖縄学にとって大きな蹉跌さてつであります。東京で沖縄文献の蒐集と保存とが講じられているのは、実に有難く『沖縄論叢』の上梓じょうしもその資を得るためといわれます。
沖縄の思い出 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
東西遊記を上梓じょうしして著名な医師、橘南谿たちばななんけいの松島紀行にれば、「松島にあそぶ人は是非ともに舟行すべき事なり、また富山に登るべき事なり」
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そのため本文の取捨や順次、のみならず挿絵の世話、校正その他凡ての事務一切を浅川さんの配慮にゆだねた。それ故同姉がいなかったら、決して上梓じょうしの運びには至らなかったであろう。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
しからば世に多少知られている『経籍訪古志』はどうであるか。これは抽斎の考証学の方面を代表すべき著述で、森枳園もりきえんと分担して書いたものであるが、これを上梓じょうしすることは出来なかった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
あえて書肆しょしの希望にまかせて再訂上梓じょうしすることにした。
三国志:01 序 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日本では偉い作家が死んで、そのあとで上梓じょうしする全集へ、必ず書簡集なるものが一冊か二冊、添えられてある。