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みヽ
園さまにも
言ひきかせたきこと
多くあれど
我が
口よりいはヾ
又耳に
兩手なるべし、
不思議に
縁のない
人に
縁があるか
馬鹿らしきほど
置いてゆくが
嫌やな
氣持と
牛込ちかくに
下宿住居する
森野敏とよぶ
文學書生、いかなる
風や
誘ひけん、
果放なき
便りに
令孃のうはさ
耳にして、
可笑しき
奴と
笑つて
聞きしが、その
獨栖の
理由
身に
引うけて
世話をすること
眞の
兄弟も
出來ぬ
業なり、これを
色眼鏡の
世の
人にはほろ
醉の
膝まくらに
耳の
垢でも
取らせる
處が
見ゆるやら、さりとは
學士さま
寃罪の
訴へどころもなし。
彼の
笑顏みたしとても
及ぶ
事にあらず、
父君とても
左なりかし、
遠く
離れて
面影をしのばヽ、
近きには十
倍まして、
深かりし
慈愛の
聲この
耳を
離れざるべし、
是れによりてこそ
此處をも
捨て