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べんご
若崎は話しの流れ方の
勢で何だか自分が自分を
弁護しなければならぬようになったのを感じたが
そりや
嘘だ。おれの細君が、いくら
弁護したつて、
嘘だ。尤も君は
人を
笑つても、自分を笑つても、両方共
頭の
中で
遣る人だから、
嘘か本当か其辺はしかと
分らないが……
然し
崖丈は
大丈夫です。どんな
事があつたつて
壞えつこはねえんだからと、
恰も
自分のものを
辯護でもする
樣に
力んで
歸つて
行つた。
で、
町では
病院の
這麼有樣を
知らぬのでは
無く、一
層棒大にして
亂次の
無いことを
評判してゐたが、
是に
對しては
人々は
至つて
冷淡なもので、
寧ろ
病院の
辯護をしてゐた
位。
「
兄さんも
隨分呑氣ね」と
小六の
方を
向いて、
半ば
夫を
辯護する
樣に
云つた。
宗助は
細君から
茶碗を
受取つて、
一言の
辯解もなく
食事を
始めた。
小六も
正式に
箸を
取り
上げた。
御米は
夫程でもないと、
辯護しなければならなかつた。けれども
實際は
誰もゐない
晝間のうち
抔に、あまり
顏を
赤くして
歸つて
來られるのが、
不安だつたのである。
宗助は
夫なり
放つて
置いた。