-
トップ
>
-
たまじやくし
博士は大学の次ぎには、湯屋が好きだが、湯に入つて
附近に人が居ないのに気がつくと、
定つてお
玉杓子の様な恰好をして、湯の中を泳ぎ廻る。
お
玉杓子が
水の
勢ひに
怺へられぬやうにしては、
俄に
水に
浸されて
銀のやうに
光つて
居る
岸の
草の
中に
隱れやうとする。
おつぎは
鍋を
卸して
茶釜を
懸けた。ほうつと
白く
蒸氣の
立つ
鍋の
中をお
玉杓子で二三
度掻き
立てゝおつぎは
又葢をした。おつぎは
戸棚から
膳を
出して
上り
框へ
置いた。
鍋の
中は
少しぷんと
焦つく
臭がした。
彼はお
玉杓子で
掻き
立てた。
鍋の
底は
手を
動かす
毎にぢり/\と
鳴つた。
彼は
僅に
熱い
雜炊が
食道を
通過して
胃に
落ちつく
時ほかりと
感じた。