ふゆ)” の例文
高窓たかまど障子しょうじやぶあなに、かぜがあたると、ブー、ブーといって、りました。もうふゆちかづいていたので、いつもそらくらかったのです。
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
さうしたあかいろどられたあきやまはやしも、ふゆると、すっかりがおちつくして、まるでばかりのようなさびしい姿すがたになり
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
春の雪はきえやすきをもつて沫雪あわゆきといふ。和漢わかんの春雪きえやすきを詩哥しいか作為さくいとす、これ暖国だんこくの事也、寒国の雪はふゆ沫雪あわゆきともいふべし。
あさになるとかさずとほ納豆賣なつとううりこゑが、かはらとざしもいろ連想れんさうせしめた。宗助そうすけとこなかそのこゑきながら、またふゆたとおもした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わたしこゝろむかへなければならなかつた……それはちからよわふゆだからだらうか? いや! どうして彼女かのぢよちからあなどこと出來できよう。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
保名やすなからだがすっかりよくなって、ってそと出歩であるくことができるようになった時分じぶんには、もうとうにあきぎて、ふゆなかばになりました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
道子みちこ一晩ひとばんかせげば最低さいていせん五六百円ぴやくゑんになる身体からだ墓石ぼせき代金だいきんくらいさらおどろくところではない。ふゆ外套ぐわいたうふよりもわけはないはなしだとおもつた。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
ときはたには刷毛はけさきでかすつたやうむぎ小麥こむぎほのか青味あをみたもつてる。それからふゆまた百姓ひやくしやうをしてさびしいそとからもつぱうちちからいたさせる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
金銀きんぎん珠玉しゆぎよくたくみきはめ、喬木けうぼく高樓かうろう家々かゝきづき、花林曲池くわりんきよくち戸々こゝ穿うがつ。さるほどに桃李たうりなつみどりにして竹柏ちくはくふゆあをく、きりかんばしくかぜかをる。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この子家鴨こあひるくるしいふゆあいだ出遭であった様々さまざま難儀なんぎをすっかりおはなししたには、それはずいぶんかなしい物語ものがたりになるでしょう。
ふゆ夜長よながに、粉挽こなひうたの一つもうたつてやつて御覽ごらんなさい。うたきな石臼いしうす夢中むちうになつて、いくらいても草臥くたぶれるといふことをりません。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
さてこの夫婦ふうふうちまえにわに、一ぽん杜松としょうがありました。ふゆのことでしたが、おかみさんはこのしたで、林檎りんごかわいていました。
みぎごとくし三月四月五月をはるとし、六月七月八月をなつとし、九月十月十一月をあきとし、十二月一月二月をふゆとするなり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
わたし去年きよねんふゆつまむかへたばかりで、一たい双方さうはうとも内気うちきはうだから、こゝろそこから打釈うちとけるとほどれてはゐない。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「我がかげの我をおひけりふゆつき」と人之をうたがふ時はやなぎかゝ紙鳶たこ幽靈いうれいかとおもひ石地藏いしぢざう追剥おひはぎかとおどろくがごとし然ば大橋文右衞門の女房お政はをつとの身の上を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
名はおふゆといって、それが格二郎の、日毎の出勤を楽しくさせた所の、実を云えば、最も主要な原因であったのだ。
木馬は廻る (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ふゆ月夜つきよなにかに田町たまちあたりをあつめにまわると土手どてまで幾度いくどいたことがある、なにさむいくらゐきはしない、何故なぜだか自分じぶんらぬが種々いろ/\ことかんがへるよ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「はっはっはっ、いくら透明人間とうめいにんげんになっても、人間はやはり人間だよ。まふゆにはだかでいられるものか」
この某町ぼうまちから我村落わがそんらくまで七車道しやだうをゆけば十三大迂廻おほまはりになるので我々われ/\中學校ちゆうがくかう寄宿舍きしゆくしやから村落そんらくかへときけつしてくるまらず、なつふゆ定期休業ていききうげふごとかなら
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
玄關げんくわんさき別室全體べつしつぜんたいめてゐるひろこれが六號室がうしつである。淺黄色あさぎいろのペンキぬりかべよごれて、天井てんじやうくすぶつてゐる。ふゆ暖爐だんろけぶつて炭氣たんきめられたものとえる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
たとへば、緩漫なまのろふゆしりへにはなやかなはるめがるのをて、血氣壯けっきさかんわか手合てあひかんずるやうなたのしさ、愉快こゝろよさを、つぼみはな少女をとめらと立交たちまじらうて、今宵こよひ我家わがやりゃうせられませうず。
部屋へやには、ふゆだというのに、あたたかな空気くうきがほかほかとここちよくながれ、部屋へやにもろうかにも、ガスとうがいっぱいついていて、よるもまるでひるのようにあかるいのです。
その近所きんじょにはいまでもきつねたぬきがいるそうで、ふゆよるなど、ひと便所べんじょにゆくため戸外こがいるときには、をあけるまえに、まず丸太まるたをうちあわせたり、はしらたけでたたいたりして
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
『それを説明せつめいする唯一ゆゐいつ方法はうはふはそれをおこなふことである』(みなさんがふゆみづかれをこゝろみんとほつするならば、ドードてうがそれを如何いかにしてつたかをはなしませう)
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
としふゆ雪沓ゆきぐつ穿いて、吉備国きびのくにから出雲国いずものくにへの、国境くにざかい険路けんろえる。またとしなつにはくような日光びつつ阿蘇山あそざん奥深おくふかくくぐりりてぞく巣窟そうくつをさぐる。
すなわ使つかいを発して兵を徴し、百八十万を得、まさに発せんとしたりと。西暦千三百九十八年は、タメルラン西部波斯ペルシヤを征したりしが、そのふゆ明の太祖及び埃及エジプト王の死を知りたりとなり
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ふゆごもりはる大野おほぬひとらねかもこころく 〔巻七・一三三六〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ときふゆはじめで、しもすこつてゐる。椒江せうこう支流しりうで、始豐溪しほうけいかは左岸さがん迂囘うくわいしつつきたすゝんでく。はじくもつてゐたそらがやうやうれて、蒼白あをじろきし紅葉もみぢてらしてゐる。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
それから続いて「ふゆ」「源兵衛げんべえ」なぞの、今度は氏一人で作った俳体詩が出来た。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
いまは、ふゆはるこゝろうへまよはずにゐられない時分じぶんである。こゝろではいつとも時候じこう區別くべつがつかないのに、るものは、すでにすくなくとも、ひとつだけははるらしいしるしをしめしてゐる。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
あるくもつたふゆ日暮ひぐれである。わたくし横須賀發よこすかはつのぼり二とう客車きやくしやすみこしおろして、ぼんやり發車はつしやふえつてゐた。とうに電燈でんとうのついた客車きやくしやなかには、めづらしくわたくしほか一人ひとり乘客じようきやくはゐなかつた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
だが日本海と格別ちがつたこのふゆ眞中まなかにさへ暖かく明るい大洋も、あのわたしが三十何年まへ山裾の城下まちから、十何里はなれた港へゆく途中、うまれて初めて見た耀かがやかしいばかり綺麗な
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
羽二重はぶたへ小袖羽織こそでばおり茶宇ちやうはかま、それはまだおどろくにりないとして、細身ほそみ大小だいせうは、こしらへだけに四百兩ひやくりやうからもかけたのをしてゐた。こじりめたあつ黄金きん燦然さんぜんとして、ふゆかゞやいた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
また暖房だんぼうのあるためにふゆ館内かんないはるのようにあたゝかすごすことが出來できます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「そのふゆないうちにありどののお世話せわにならなきやなりますまい」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
ふゆだ、ふゆだ。葡萄祭ぶだうまつりも、さらば、さらば……
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ながれぬ。やがてふゆぬ、熟睡うまゐぞせまし。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
ふゆの、ゆめひとつはかくなりき。
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
ふゆ蘆毛あしげつも雪毛ゆきげ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
ふゆかぜ
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はなといいましても、わたしは、ふゆにかけてはななんですよ。あなたのおともだちで、わたし姿すがたないものがたくさんあるとおもいます。」
寒い日のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
其年そのとし京都きやうとふゆは、おとてずにはだとほ陰忍いんにんたちのものであつた。安井やすゐこの惡性あくしやう寒氣かんきてられて、ひどいインフルエンザにかゝつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
みじかふゆはもうちかけて黄色きいろひかり放射はうしやしつゝ目叩またゝいた。さうして西風にしかぜはどうかするとぱつたりんでしまつたかとおもほどしづかになつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「もうぢきにふゆが來るぞ、ぐづ/\してはゐられやしない。」とでもいつてるやうに思へて、なんとなくものわびしい氣持きもちがするのでした。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
けれども、ふゆ鳥打帽とりうちばうかむつた久留米絣くるめがすり小僧こぞうの、四顧しこ人影ひとかげなき日盛ひざかりを、一人ひとりくもみねかうして勇氣ゆうきは、いまあいする。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
日本につぽんやまのうさぎには二通ふたとほりあつて、そのひとつは平常へいじよう褐色かつしよくをしてゐますが、ふゆになると眞白まつしろかはるもの、もひとつは一年中いちねんじゆうとほして褐色かつしよくのものです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
うまひましたが、ゆきればうまでもうれしいかととうさんはおもひました。やまなかふゆやお正月しやうぐわつには、お前達まへたちらないやうなたのしさもありますね。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
が、そのふゆってしまったとき、あるあさ子家鴨こあひる自分じぶん沢地たくちがまなかたおれているのにがついたのでした。
ふゆさむい日でした。馬子まご馬吉うまきちが、まちから大根だいこんをたくさんうまにつけて、三さき自分じぶんむらまでかえって行きました。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
詩経しきやうには男子だんししやうとし、或は六雄将軍りくゆうしやうぐんの名をたるも義獣ぎじうなればなるべし。なつしよくをもとむるのほか山蟻やまあり掌中てのひら擦着すりつけふゆ蔵蟄あなごもりにはこれをなめうゑしのぐ。