鬼子母神きしもじん)” の例文
しながら思うに、大正元年の秋、英一がまだ十歳なりける時、大西一外君に誘われて我と共に雑司ぞうし鬼子母神きしもじんに詣でしことあり。
伊右衛門はますます恐れて雑司ヶ谷ぞうしがや鬼子母神きしもじんなどへ参詣さんけいしたが、怪異はどうしても鎮まらないで女房が病気になったところへ、四月八日
四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
たとえば君が住まわれた渋谷の道玄坂どうげんざかの近傍、目黒の行人坂ぎょうにんざか、また君と僕と散歩したことの多い早稲田の鬼子母神きしもじんあたりの町、新宿、白金……
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
うしても姐御に逢わずに居られないから、ここ十日の間に、折を見て、雑司ヶ谷ぞうしがや鬼子母神きしもじん様へお詣りをして貰い度い。
裸身の女仙 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
二十許はたちばかりの親類の娘を連れて、鬼子母神きしもじん参詣さんけいをした事がありますがね、桐の花が窓へ散る、しんとした御堂おどうの燈明でた、襟脚のよさというものは
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
失うことではないときもぐって、さて、この数日というものを、まるで鬼子母神きしもじんのような血相になり、遂に、武蔵のすがたを突き止めて来たのであった。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分はかつて雑司ヶ谷の鬼子母神きしもじんに参詣して御鬮みくじを引いたこともあったが……やはり行末のことや、はかない恋をそれとも知らなかったからである——この道を行けば
雑司ぞうし鬼子母神きしもじん高田たかた馬場ばば雑木林ぞうきばやし、目黒の不動、角筈つのはず十二社じゅうにそうなぞ、かかる処は空を蔽う若葉の間より夕陽を見るによいと同時に、また晩秋の黄葉こうようを賞するに適している。
「待ちな、おばばおいらも行く。……あの走りざま、色気がないなあ……えんの行者に呪縛じゅばくされたという、鬼子母神きしもじん様にそっくりじゃ。飛天夜叉殿、ではご免。……未練のこして行くとしようぞ」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私が或る特殊な縁故を辿たどりつつ、雑司ぞうし鬼子母神きしもじん陋屋ろうおくの放浪詩人樹庵次郎蔵じゅあんじろぞうの間借部屋を訪れたのは、あたかも秋はたけなわ、鬼子母神の祭礼で、平常は真暗な境内にさまざまの見世物小屋が立ち並び
放浪作家の冒険 (新字新仮名) / 西尾正(著)
かぶと人形、菖蒲しょうぶ刀、のぼりいちが立って、お高は、それも見に行きたいと思ったが、二十七日は、雑司ぞうし鬼子母神きしもじんに、講中のための一年一度の内拝のある日であった。お高は、これへ行ってみたかった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「何もしやしません、わたしは鬼子母神きしもじんの生れ変りですからね」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
下女のお米をめたところで、大した證據も上らなかつたので、平次はその足をして、雜司ヶ谷の鬼子母神きしもじん裏にある鐵心道人の庵室を訪ねました。
その後わたしは目白に一旦立ち退いて、雑司ヶ谷ぞうしがや鬼子母神きしもじん附近の湯屋にゆくことになった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
鬼子母神きしもじん御影みえいが見えたでしゅで、蛸遁たこにげで、岩を吸い、吸い、色を変じて磯へ上った。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
下女のお米を責めたところで、大した証拠も上がらなかったので、平次はその足をして、雑司ヶ谷の鬼子母神きしもじん裏にある鉄心道人の庵室を訪ねました。
その後わたしは目白に一旦いったん立退たちのいて、雑司ぞうし鬼子母神きしもじん附近の湯屋にゆくことになった。
風呂を買うまで (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この谷を一つ隔てた、向うの山の中途に、鬼子母神きしもじん様のお寺がありましょう。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鬼子母神きしもじんの境内から、百姓地まであふれた、茶店と、田楽屋でんがくやと、駄菓子屋と、お土産屋みやげやは、一遍に叩き割られたように戸が開いて、声をしるべに、人礫ひとつぶてが八方に飛びます。
「おかみさんは鬼子母神きしもじんさまへお詣りに行きました」
半七捕物帳:64 廻り灯籠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
雜司ヶ谷鬼子母神きしもじんのあたりで御鷹を放たれた時、何處からともなく飛んで來た一本の征矢そやが、危ふく家光公の肩先をかすめ、三つ葉あふひの定紋を打つた陣笠の裏金に滑つて
雑司ヶ谷鬼子母神きしもじんのあたりで御鷹を放たれた時、どこからともなく飛んで来た一本の征矢そやが、危うく家光公の肩先をかすめ、三つ葉葵の定紋を打った陣笠の裏金に滑って
鬼子母神きしもじん様境内の茶店の娘、お菊殺しの難事件を解決した(「玉の輿の呪い」)銭形平次の鮮やかな腕前を思い出して、我慢の角を折って助勢を頼みにやって来たのでした。
目白臺で睨みをかして居る顏の古い御用聞で、三つ股の源吉といふ中年者ですが手に餘るほどの大事件を背負ひ込んで、町方役人から散々に油を絞られ、フト二三年前、鬼子母神きしもじん樣境内の茶店の娘
鬼子母神きしもじん手前の現場に着くと、源吉の子分の磯吉が飛出しました。
鬼子母神きしもじん手前の現場に着くと、源吉の子分の磯吉が飛出しました。