鬼子母神きしぼじん)” の例文
東京天王寺てんのうじにて菊の花片手に墓参りせし艶女えんじょ、一週間思いつめしがこれその指つきを吉祥菓きっしょうかもたたも鬼子母神きしぼじんに写してはと工夫せしなり。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
うかとこゑけて、むねあちこち、伽藍がらんなかに、鬼子母神きしぼじん御寺みてらはとけば、えゝ、あか石榴ざくろ御堂おだうでせうと、まぶたいろめながら。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「だが、まあいいや、久し振りでこっちへ登って来たから、鬼子母神きしぼじん様へ御参詣をして、茗荷屋みょうがやで昼飯でも食おうじゃねえか」
半七捕物帳:08 帯取りの池 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この頃の御感想は……私はこの言葉を胸にくりかえしながら、雑司ぞうしの墓地を抜けて、鬼子母神きしぼじんのそばで番地をさがした。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
唐人のけの皮を一目で引んいだ、御眼力、お若えが恐れ入谷いりや鬼子母神きしぼじん……へっへっへっなんでごわす? ま、そのお話てえのをザッと伺おうじゃアげえせんか
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
鬼子母神きしぼじんの境内から、百姓地まで溢れた、茶店と、田樂屋でんがくやと、駄菓子屋と、お土産屋は、一遍に叩き割られたやうに戸が開いて、聲をしるべに、人礫ひとつぶてが八方に飛びます。
信仰しんかうなし己の菩提所ぼだいしよ牛込うしごめの宗伯寺なりしが終に一大檀那だいだんなとなり寄進の品も多く又雜司ざふし鬼子母神きしぼじん金杉かなすぎ毘沙門天びしやもんてん池上いけがみ祖師堂そしだうなどの寶前はうぜん龍越りうこしと云ふ大形の香爐かうろ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「こいつは恐れ入った。ははははは。おそれ入谷いりや鬼子母神きしぼじんか、はははは。」
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
お島は我子ばかりをいたわって、人の子を取ってったという鬼子母神きしぼじんが、自分の母親のような人であったろうと思った。母親はお島一人を除いては、どの子供にも同じような愛執を持っていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
其処そこには、弘法大師こうぼうだいし円光大師えんこうだいし日蓮祖師にちれんそし鬼子母神きしぼじんとの四つのお堂があり、憲兵屋敷は牢屋敷裏門をそのまま用いていた。小伝馬町三丁目、通油町と通旅籠町の間をつらぬいてたてに大門おおもん通がある。
旧聞日本橋:02 町の構成 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
鬼子母神きしぼじん境内。吉右衛門邸にて披講。
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
たとえば踊りながらでんでん太鼓で、をおあやしのような、鬼子母神きしぼじんの像があった。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あれで、鬼子母神きしぼじんさまなんだ。」
貧しい場末の町端まちはずれから、山裾やますその浅い谿たにに、小流こながれ畝々うねうねと、次第だかに、何ヶ寺も皆日蓮宗の寺が続いて、天満宮、清正公せいしょうこう、弁財天、鬼子母神きしぼじん、七面大明神、妙見宮みょうけんぐう、寺々に祭った神仏を
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)