骨董品こっとうひん)” の例文
もっとも君の見らるる通り、僕の家には、装飾品もなければ骨董品こっとうひんもないし、また僕の着る着物きものは、家内のも子供のも同然、流行にはわない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
骨董品こっとうひんのおびただしい陳列で永久的に満たされている西洋の屋内は、単に俗な富を誇示しているに過ぎない感を与える。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
作家であった山村は瀬戸物の愛翫癖あいがんへきがあったところから、今は庸三の家からかなり離れた場所で、骨董品こっとうひんを並べていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「えゝ。毎年社長の屋敷でやるんです。鬼島さんが二等賞を取りました。時価百円からする骨董品こっとうひんを頂戴しましたよ」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
贅沢品ぜいたくひんとなること、始めから骨董品こっとうひんとなること、民器とならぬこと、したがって民衆の生活とは没交渉になること、顧客は独り富者のみとなること。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
こういう分類の方法は、土器と限らず、いわゆる美術骨董品こっとうひんなどの鑑定には、度々用いられているやり方である。
字も立派だし、表装して保存しているが、今となっては、私のあらゆる骨董品こっとうひんよりも尊いものになってしまった。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
たそがれ。売品の首飾りや耳飾りがすだれのように下っている軒の間から爆発したような灯が透けていた。その並び店の中の一軒だった。骨董品こっとうひん店があった。
豆腐買い (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
宗助はついでだから、それと同時に、叔父に保管を頼んだ書画や骨董品こっとうひん成行なりゆきを確かめて見た。すると、叔母は
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どちらも茣蓙ござで包んで上箱に入れて、貴重品扱いにして門司の山九運送店宛に出して下さいな。そう。中味は仏像とか、骨董品こっとうひんとか、何とかしといて頂戴。
女坑主 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
父の書斎道具や骨董品こっとうひんは蔵書と一緒に糶売せりうりをされたが、売り上げ代はとうとう葉子の手にははいらなかった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
また従って優美な美術家を今更自分の国から出そうとも考えていない如く見受けられもする。彼らは最早や油絵芸術を骨董品こっとうひんと見なしているのかも知れない。
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
飾り付けと云っては一隅の三角だなに、西洋の骨董品こっとうひんらしい、きたならしく蝋涙ろうるいのこびり着いた燭台しょくだいと、その他二三の蚤市のみいちからでも買って来たらしいガラクタと
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
徳川大名の置き物とさえ言えば、仏壇の蝋燭立ろうそくだてを造りかえたような、いかがわしい骨董品こっとうひんでさえ二両の余に売れたという。まだ内地の生糸商人はいくらも入り込んでいない。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
文学の思想性を骨董品こっとうひんの鑑定のようなホンモノ、ニセモノに限定してしまった。
骨董品こっとうひんより始末の悪いのは、ほしい人にあきらめと算盤そろばんとのないことである。その上にまだ仲に立つ才取りのような者があって、さやを取って売るつもりで、一時買っておいてまたらせる。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
仏像ぶつぞうや、陶器類とうきるいや、いろんな骨董品こっとうひんなどが、いっぱい並んでいて、その奥のほうに、年とったがんじょうな男がひかえていました。顔じゅうまっ黒いひげをはやして、目がきらきら光っています。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
首は拾いものか買いものか、いずれにしても塩づけの骨董品こっとうひんをほかから求めきたったものに相違ないのです。そして、その骨董品を生首と見せかけるべく、別な血を塗ったものに相違ないのです。
たなに翻訳小説や詩集のようなものが詰まっていた。細々こまこました骨董品こっとうひんも並べてあった。庸三は花園をひかえた六畳の縁先きへ出て、額なんか見ていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
また従って優美な美術家を今更自分の国から出そうとも考えていない如く見受けられもする。彼らは最早や油絵芸術を骨董品こっとうひんと見なしているのかも知れない。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
ちょうど我々骨董品こっとうひんに何らの心得なき者が、物品そのものの貴賤きせんの程度はさらに分別つかぬが、道具屋どうぐやだまかされて高価を出せば良品が手に入ると思うのと少しも変わらぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
道具類もせきばかり取って、金目にならないものは、ことごとく売り払ったが、五六幅の掛物と十二三点の骨董品こっとうひんだけは、やはり気長に欲しがる人をさがさないと損だと云う叔父の意見に同意して
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
民藝というと、何か骨董品こっとうひんのことででもあるかのように思われがちであり、またしばしば趣味品という聯想を有たれるようでありますが、そういうものを指しているのでは毛頭ないのであります。
北支の民芸(放送講演) (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
らし中には骨董品こっとうひんなどもあって今日でも百円二百円五百円などと云う高価なのがめずらしくない天鼓の飼桶には支那から舶載はくさいしたという逸品いっぴんまっていた骨は紫檀で作られこし琅玕ろうかん翡翠ひすいの板が入れてありそれへ細々こまごまと山水楼閣ろうかくりがしてあったまこと高雅こうがなものであった。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
道太は辰之助からその家にあった骨董品こっとうひんの話などを聞きながら、崖の下を歩いていた。飯を食う処は、その辺から見える山のすそにあったが、ぶらぶら歩くには適度の距離であった。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
時々古い軸が持ち出されたり、骨董品こっとうひんが売り払われたりした。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)