飯盛めしもり)” の例文
夜の中に通り流石さすが晝中は人目をはゞかひそかに彼の盜み取し二百兩の金にて宿場しゆくば飯盛めしもり女を揚げて日を暮し夜に入るを待て其處を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この驕々たる三馬が一日思い立って日本橋から遠い四谷の端れまで駕輿かごをやったのは、狂歌師宿屋やどや飯盛めしもりとしての雅望と、否
仇討たれ戯作 (新字新仮名) / 林不忘(著)
まくればなお盗賊どろぼうに追い銭の愚を尽し、勝てば飯盛めしもりに祝い酒のあぶくぜにを費す、此癖このくせ止めて止まらぬ春駒はるごま足掻あがき早く、坂道を飛びおりるよりすみやか
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
上は芳町、柳橋の芸者から松の位の太夫職、下は宿場の飯盛めしもりから湯屋女、辻君つじぎみ、夜鷹に到るまで、あらゆる階級の要求に応ずる設備が整っていた。
道庵は問題の提灯ちょうちんをさげて、尻はしょりで、たらいから跣足はだしのままで抜からぬ顔で、火元へ出かけようとするから、玉屋のあだっぽい飯盛めしもりが、飛んで出て
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
遠くにちらつく燈火を目当に夜道を歩み、空腹に堪えかねて、見あたり次第、酒売る家に入り、怪しげな飯盛めしもりの女に給仕をさせて夕飯をう。電燈の薄暗さ。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
朽ちた露地板は気前を見せて、お孝が懐中ふところで敷直しても、飯盛めしもりさえ陣屋ぐらいは傾けると云うのに、芸者だものを、と口惜くやしがっても、狭い露地は広くならぬ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此噺このはなし日外いつぞやしも日待ひまちとき開始ひらきはじめしより、いざや一くわいもよほさんと、四方赤良大人よものあからうし朱楽管江大人あけらくわんかううし鹿都辺真顔しかつべまがほ大屋おほや裏住うらずみ竹杖たけづゑ為軽すがる、つむりの光、宿屋やどや飯盛めしもりを始めとして
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「なんだ、その面で。宿場の飯盛めしもりぢやあるまい、この部屋のざまは何だ。」
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
いわゆる「飯盛めしもりも陣屋ぐらいは傾ける」程度の飯盛相当の城であろう。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
お千絵様とは似もつかぬ飯盛めしもりと旅のふすまをひッかついだ。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見て其嬋妍あでやかさにほく/\悦び在郷ざいがうそだちの娘なれば漸々やう/\宿場しゆくば飯盛めしもりか吉原ならば小格子こがうしわづか二十か三十の金を得るのがせきの山と陰踏かげぶみをして置たるが少しばかり手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「そうか、では道中は、別してまた色慾を慎まなければならぬ……道中には、飯盛めしもりだの売女ばいじょだのというものがあって、そういうものには得て湿毒しつどくというものがある」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
稗黍ひえきびの葉を吹く風もやや涼しく、熔岩とともにころがった南瓜かぼちゃの縁に、小休みの土地のもの二三人、焼土やけつちの通りみちを見ながら、飯盛めしもり彼女きゃつは、赤い襦袢じゅばんを新しく買った。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なんでも、東海道三島の宿で、浅草三間町の鍛冶屋富五郎てエ野郎が飯盛めしもりの女を買って金をやったとこがお前、その小判がまえから廻状のまわっていた丸にワの字の極印ごくいんつきだからたまらねえや。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
泊り泊りで渋皮のむけた飯盛めしもりを見れば、たまには冗談じょうだんの一つもいってみたいのは人情でありましょう。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)