頃合ころあい)” の例文
九月の終り頃、この契約をしておくと、翌年の五月頃までずっと、頃合ころあいを見はからってタンク車がやってきて、重油を補給してくれる。
ウィネッカの秋 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
庭やはたけで遊ぶと叱られるから田へ行くだけでなく、全く刈田かりた頃合ころあいの柔かさを、さがしてでも子どもはそこへ集まったのである。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
肉片の適当に分解したところを捕らえた烹調ほうちょうの旨味は、昔の料理書にある熟して燗せず、肥にして喉ならず、といった頃合ころあいではないかと思う。
海豚と河豚 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
頃合ころあいをはかって、善ニョムさんは寝床の上へ、ソロソロ起きあがると、股引ももひき穿き、野良着のシャツを着て、それから手拭てぬぐいでしっかり頬冠ほおかむりした。
麦の芽 (新字新仮名) / 徳永直(著)
しばらく時間を置いて、丁度ちょうどA液がうまく浸みこんだ頃合ころあいを見はからって、こんどはB液の入ったB種弾が投下されるのだ。
ある日二人は、例によってむつまじく連れそいながら、牛込辺うしごめあたりの売邸を探しに歩いた。すると一軒頃合ころあいの家が見つかった。
はいって見れば臭味もそれほどでなく、ちょうど頃合ころあいの温かさで、しばらくつかっているとうっとりして頭が空になる。おとよさんの事もちょっと忘れる。
隣の嫁 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
獅子のごときたてがみで肩を覆える老猴ども前に立ち、頃合ころあいの岩ごとに上って前途を見定む、また隊側に斥候たるあり、隊後に殿しんがりするあり、いずれも用意極めて周到
驚破すわ、そのまぎれに、見物の群集ぐんじゅの中から、頃合ころあいなものを引攫ひきさらつて、空からストンと、怪我けがをせぬやうにおといた。が、丁度ちょうど西の丸の太鼓櫓たいこやぐらの下の空地だ、真昼間まっぴるま
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
判ったようでまた判らないようなのが、ちょうど持って来いという一番結構な頃合ころあいなんですからね。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
床下にひそんで、頃合ころあいを計っていた九鬼弥助は、ふところから用意の呼笛よびこを出して口にくわえた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから頃合ころあいを見計らって閣下に事情を打ち明けたら、直ぐに引受けてくれたのである。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
本箱らしい黒塗のげた頃合ころあいの高さの箱が腰掛ともなりランプ台ともなるらしかった。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
シヅは、そっと戸口のほうへ行って、頃合ころあいをはかりながら、だしぬけにドアをあけた。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その文庫というのは、頃合ころあい手匣てばこで、深さも相応にあり、ふた中高なかだかになっていて柔かい円みがついている。蓋の表面には、少し低めにして、おもいきり大きい銀泥ぎんでいの月が出してある。
牛の様子をじっと見ていながらただ頃合ころあいを計るように睨んでいるだけでした。
(新字新仮名) / 久米正雄(著)
本来は築地つきじ辺一番便利と存じ最初より註文ちゅうもん致置候処いまだに頃合ころあいの家見当り申さぬ由あまり長延ながびき候ては折角の興も覚めがちになるおそれも有之候あいだ御意見拝聴の上右浅草あさくさか赤坂かのうちいづれにか取極とりきめたき考へに御座候。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その上に山に入り旅に出れば、必ずそこに頃合ころあいの御寺があるというわけでもなかった。旅僧の生活をしようと思えば、少しは学問なり智慧ちえなりがなければならなかった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そして、いよいよ確実にそうと決ったら、頃合ころあいを見はからって三木に話してやろうと思った。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
頃合ころあいはよかった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)