くつ)” の例文
許宣はしかたなしにくつを脱ぎくつしたってそれをいっしょに縛って腰にけ、赤脚はだしになって四聖観の簷下を離れて湖縁へと走った。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
若者の履いているくつは破れ、その足は塵に塗れている。ヨセフには若者の求めているものが水だけでないことがわかっていた。
聖家族 (新字新仮名) / 小山清(著)
青摺衣あおずりごろも二領、くつ十足などもあげられているが、弘法こうぼう滅後の風俗変遷を経た後の貞観時代にどれほど天平の面影を残していたかはわからない。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
三兄弟はニコと笑ってくつ穿いた。路銀だといって銀三十両を晁蓋が贈ったが、どうしても受けとらない。呉先生は、その物固さを笑って
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
袈裟けさ、僧帽、くつ剃刀かみそり、一々ともに備わりて、銀十じょう添わりぬ。かたみの内に朱書あり、これを読むに、応文は鬼門きもんよりで、水関すいかん御溝ぎょこうよりして行き、薄暮にして神楽観しんがくかん西房せいぼうに会せよ、とあり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
おびのなかにきんぎんまたはぜにつな。たびふくろも、二枚にまい下衣したぎも、くつも、つえつな。よ、われなんじらをつかわすは、ひつじ豺狼おおかみのなかにるるがごとし。このゆえへびのごとくさとく、鴿はとのごとく素直すなおなれ。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
石秀がそれを持って、奥の法要の間へ急ぎかけると、二階の階段から、花兎はなうさぎ刺繍ぬいくつに、淡紫のもすそを曳いた足もとが、音もなく降りて来て。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女はそう言ってくつ穿いて小婢といっしょにあがって往った。許宣もその後からあがったが、それは赤脚はだしのままであった。
雷峯塔物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
時は五月も過ぎて早や大陸の砂はけていた。夏雲はぎらぎらとひとみを射るばかり地平線を踏まえて高く、地熱はくつの底をとおして、足の裏を火照ほてらしてくる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
空には薄墨色をした雲が一めんにゆきわたっていた。許宣はしかたなしにくつを脱ぎくつしたも除って、それをいっしょに縛って腰にけ、赤脚はだしになって四聖観の簷下を離れて走りおりた。
雷峯塔物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
くついのを穿いて、官巷のみせへ往って李将仕に逢った。
雷峯塔物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
くついのを穿いて、官巷の舗へ往って李将仕にった。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)