間夫まぶ)” の例文
穏当おとなしくなって姪子めいっこを売るのではない養女だかめかけだか知らぬが百両で縁をきっれろという人にばかりの事、それをおたつ間夫まぶでもあるか
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
米吉は坊士禿から成人して色子になり、お染の薄墨太夫に拾われて、その間夫まぶになったのさ。商売女のいか物喰いだよ。
だけれども間夫まぶが有るなら添わして遣ると、何うも由良之助見ていな事をおっしゃったが、その帰りに與市兵衞よいちべえ見ていに殺されるていのは何うも分んねえ
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その後、いつのまにやら張三は、こッそり、ここへ一人がよいをしはじめていた。つまり客ならぬ妾宅の間夫まぶ——。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
手切話しに、うちを分けて、間夫まぶをたてひく三度の勤めに、消え際がまた栄えた、おなじ屋号の御神燈を掛けたのが、すなわちこの露地で、稲葉屋のぜんがそれである。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そうざます、花魁衆の間夫まぶにしては、思いのほかにりちぎらしいかたざました」
間夫まぶ」、「結び文」、「床へさし込むおぼろ月」、「櫺子れんじ」、「胸づくし」、「とりくまで」、「手管てくだ」、「口舌くぜつ」、「よいの客」、「傾城の誠」、「つねる」、「廊下をすべる上草履うわぞうり
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
もっとも、旦那に隠れて間夫まぶにあうには、この方が都合がよい便利もあった。
悪足わるあし間夫まぶの輩は傘風呂敷を借りて返さざるの徒に等し。唯困ったものなり。
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
次第しだいかさなり両側りやうかはの家のあひだに雪のつゝみきづきたるがごとし。こゝに於て所々ところ/\に雪のほらをひらき、ひさしより庇にかよふ、これを里言さとことば胎内潜たいないくゞりといふ、又間夫まぶともいふ。間夫まぶとは金掘かねほり方言ことばなるをかりもちふる也。
米吉は坊主禿かむろから成人して色子いろこになりお染の薄墨太夫に拾はれて、その間夫まぶになつたのさ。商賣女のいか物喰ひだよ。
其奴そいつ間夫まぶだか、田楽だか、頤髯あごひげすさまじい赤ら顔の五十男が、時々長火鉢の前に大胡坐おおあぐらで、右の叔母さんと対向さしむかいになると、茶棚わきの柱の下に、櫛巻の姉さんが、棒縞ぼうじまのおさすり着もの
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
間夫まぶが有るなら添わして遣りたいてえ七段目の浄瑠璃じゃアねえが、美代ちゃんに然う云ったらどんなに悦ぶか知れやアしませんよ、旦那のことだから往渡ゆきわたり宜くうちへ往って然う云ったら
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そして、奴隷、間夫まぶという関係は、私が三十七の年まで、戦争で金龍が旦那と疎開するまで、つゞき、そして金龍は旦那と結婚して田舎へ落ちついて、もとより私のことなどは、忘れてしまった。
ジロリの女 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
ここでおめえさんを殺すくらいなら、なアに、人間一生、どうころんだって五分と五分、お粂の間夫まぶで暮らしているのも悪かあねえから、あっしだって、知って知らない振りをして見ていまさあね。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いやな男への屈従からはたちま間夫まぶという秘密の快楽を覚えた。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
玉屋小三郎かかえの遊女薄墨の後身であり、その間夫まぶだった大井久我之助の手許には、薄墨の書いた起請きしょうが十三通、外にとろけそうな文句を綴った日文ひぶみが三百幾十本となり、このまま諦めるにしては
「あやつ、馬関で、お蔦ちゅう芸妓げいしゃの、間夫まぶじゃった男でなか」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)