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釣臺
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つりだい
何だつて、
又……
大病人を
釣臺でかゝへて
居て、
往來、
喧嘩も
出來ない
義理ですから、
睨着けて
其のまんま
歩行いたさうです。
告れば是さへ喜びて
忽地心地は能く成けり忠兵衞
直に
結納を
揃へる中に其日は
暮行き
明日朝の
間に品々を
釣臺三
荷に
積登せ我家の
記章染拔たる大紋付の
半纒を
口へ
冷いものが
入つて、
寢臺の
上に
居るのが
分りましたつけ……
坊主が
急に
鉦を
鳴らしたのは、
丁ど、
釣臺が
病院の
門を
入る
時だつたさうです。
撰みてと言はしたれど
此方にては
素より日には
構ひなければ今日
結納幾久しく受納致すと目録書を
押頂けば忠兵衞は
路次の
外なる者を
呼込み三荷の
釣臺運ばせて油團を
おやと
思ふと、
灰色の
扉が
開いて、……
裏口ですから、
油紙なんか
散らかつた、
廊下のつめに、
看護婦が
立つて、
丁ど
釣臺を
受取る
處だつたんですつて。