遺族いぞく)” の例文
「えゝっ! 兄の遺言を。一体兄は何と云ったのです。何と云ったのです。その遺言を貴君が、今まで遺族いぞくの者に、隠しているなんて!」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
きみ遺族いぞく小穴君をあなくんなどがそれをもとめるけれど、きみほんかざれるやうなことがぼくけるものか。でもぼくはこのほんのためにたつたひとつだけは手柄てがらをしたよ。
「三つの宝」序に代へて (旧字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
いかに逆徒ぎゃくと遺族いぞくとはいえ、卑劣ひれつな武人への見せしめのためとはいえ、それは余りに厳しい惨刑さんけいであったようだ。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ある公使こうしかたってかえられましたが、そのかたが、おなくなりになって、こんど遺族いぞくは、いなかへおうつりなさるので、いろいろのしなといっしょにたものです。
時計と窓の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
引けば、いくらも残っていないんだって。だから本当はこの近所も遺族いぞくだらけなわけさ
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一はもって同行戦死者の霊をちょうしてまたその遺族いぞくの人々の不幸不平をなぐさめ、また一にはおよそ何事に限らず大挙たいきょしてその首領の地位に在る者は、成敗せいはい共にせめに任じて決してこれをのがるべからず
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
無論むろんあの海嘯つなみ相当そうとう沢山たくさん人命じんめいほろびたのでございますが、心掛こころがけ遺族いぞくけっしてうらみがましいことをもうさず、ぬのもみな寿命じゅみょうであるとあきらめて、こころから御礼おれいべてくれるのでした。
「これは面白い。元来この画はね、会員の画じゃないのです。が、何しろ当人が口癖のようにここへ出す出すと云っていたものですから、遺族いぞくが審査員へ頼んで、やっとこの隅へ懸ける事になったのです。」
沼地 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「いいひとだったけれど、あんまりはなしがちょうしよくて、信用しんようがされなかった。」という意見いけんもありました。そんなやさきへ、ちいさなはこが、おじさんの遺族いぞくから、ぼくのところへとどけられたのです。
緑色の時計 (新字新仮名) / 小川未明(著)