踏切ふみき)” の例文
しかし汽車きしやはその時分じぶんには、もう安安やすやす隧道トンネルすべりぬけて、枯草かれくさやまやまとのあひだはさまれた、あるまづしいまちはづれの踏切ふみきりにとほりかかつてゐた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
此處こゝ大黒屋だいこくやのとおもときより信如しんによものおそろしく、左右さゆうずしてひたあゆみにしなれども、生憎あやにくあめ、あやにくのかぜ鼻緒はなををさへに踏切ふみきりて、せんなき門下もんした紙縷こより心地こゝち
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
海の音をうしろに、鉄道線路を踏切ふみきって、西へやりの様に真直まっすぐにつけられた大路を行く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
やつと隧道トンネルたとおもふ——そのときその蕭索せうさくとした踏切ふみきりのさくむかうに、わたくしほほあかい三にんをとこが、目白押めじろおしにならんでつてゐるのをた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
踏切ふみきりのちかくには、いづれもすぼらしい藁屋根わらやね瓦屋根かはらやねがごみごみと狹苦せまくるしくてこんで、踏切ふみきばんるのであらう、ただりうのうすしろはたものうげに暮色ぼしよくゆすつてゐた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
なるほど、そこには女の子が一人、巡査に何かたずねられていた。その側には助役じょやくらしい男も時々巡査と話したりしていた。踏切ふみきり番は——保吉は踏切り番の小屋の前にこもをかけた死骸を発見した。
寒さ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)