賄賂まいない)” の例文
こちとらの大家さんが高い家賃を取上げてたまさかに一杯飲ます、こりゃ何もなさけじゃねえ、いわば口塞くちふさぎ賄賂まいないさ、うらみを聞くまいための猿轡さるぐつわだ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そればかりではない、「かれらは御用商人たちから賄賂まいないを取っている」ということを、まじめに信じている者さえ少なくないのだ。
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「しかし、これだけ賄賂まいないがあつまれば、当藩はだいぶ助かる。では、一番けちな別所信濃べっしょしなのへ、畳奉行をおとしてやるとしようか」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
始め手代四人へ賄賂まいないつかはしけるに下役の黒崎くろざき又左衞門は異儀いぎなく承知なし又々願上の手續てつゞきを内々差※さしづしければ九郎兵衞は渡りに舟と再び願書ぐわんじよ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
二年して彼の縉紳しんしんは権門に賄賂まいないしたことが知れて、父子で遼海りょうかいの軍にやられたので、十一娘ははじめて里がえりをした。
封三娘 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
皇儲こうちょの御誕生を渇望しておりましたので、甚しきに到っては、ビクトリア女皇の皇女おうじょである皇后陛下の周囲に、独逸ドイツ賄賂まいないを受けている者が居る。
死後の恋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それや、あんた知れきっているじゃありませんか、なぜ今日、督郵閣下の前に出る時、賄賂まいない金帛きんぱくを、自分の姿ほども積んでお見せしなかったんです。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二品は賄賂まいないの品物でござる。ところで、世上にはこう云う噂がござる。人形と称して生きた美女を献上箱の中へ入れ、好色の顕門へれるという噂が。……
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その所有物もちものは地に蔓延ひろがらず……邪曲よこしまなる者の宗族やから零落おちぶれ、賄賂まいないの家は火にけん
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
「そもそも汝はかみをなんと心得おるか、拙者は袖下郷で賄賂まいない取りの代官とあがめられておる、これは誰知らぬ者なきおごそかな事実じゃ」
其方儀奉行ぶぎやうの申付とは言ながら賄賂まいないを取役儀を失ひ無體むたい威權ゐけんろう良民りやうみんを無實の罪に陷し入候條不屆に付繩附なはつきまゝ主人へ下さる家法かはふに行ひ候樣留守居へ申渡す
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
……するとあつかましい左豊は、我に賄賂まいないをあたえよと、自分の口から求めてきたが、陣中にある金銀は、みなこれ官の公金にして、兵器戦備のついえにする物、ほかに私財とてはなし。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「松本伊豆守が好色の田沼へ、賄賂まいないとして送った生贄いけにえ、それがこの婦人なのだ」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
珍奇な、天瓜冬の砂糖菓子に小判を潜めて、賄賂まいないを贈る風習だった。天瓜冬の砂糖漬といえば、やるほうにも貰うほうにも、菓子のあいだに相当の現金ものはさめてある、無言の了解があった。
元禄十三年 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「それがそうでないんですよ、貴方のために見当がつきかねているようです、進物も賄賂まいないも受取るし、宴会にもどんどん出るし、またあの娘とは浮名が立ちますしね」
いしが奢る (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
其方儀おも役儀やくぎつとめながら賄賂まいないとりよこしまさばきをなし不吟味ふぎんみの上傳吉を無體に拷問がうもんに掛無實の罪におとし役儀をうしなでう不屆に付繩附なはつきまゝ主人遠江守へ下さるあひだ家法かはふに行ひ候やう留守居へ申渡す
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「それは、姓氏を簿に書きのぼすとき、賄賂まいないを吏員に贈らなかったからでしょう」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御幽囚ごゆうしゅうをうけて以来、われわれ三名、いかにしても、お救い申しあげんものと、早くから城下の一商人銀屋しろがねやの奥にかくまわれ、機を伺うこと半歳、ついに目的を達して、城中のさる者に賄賂まいないを送り
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はい。たとえば、こんどの黄巾の乱でも、その賞罰には、十常侍らの私心が、いろいろ働いていると聞いています。賄賂まいないをうけた者には、功なき者へも官禄を与え、しからざる者は、罪なくても官を
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)