詩吟しぎん)” の例文
兼ねて詩吟しぎんが上手だと云う所から、英語そのものは嫌っていた柔剣道の選手などと云う豪傑連の間にも、大分だいぶ評判がよかったらしい。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
夕食後には、唱歌しょうか詩吟しぎんも流行した。帰化人が、英語の歌、水夫がいかりをあげるときに合唱する歌などを教え、帰化人は、詩吟を勉強した。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
朗々ろうろうたる詩吟しぎんの声が流れた。ところが、詩吟はそれっきりで、そのあと先生は、ひょいとたたみに両手をついて四つんばいになった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
郁治は低い声で、得意の詩吟しぎんを始めた。心の感激かんげきの余波がそれにも残って聞かれる。別れの道のかどに来ても、かれらはなんだかこのまま別れるのが物足らなかった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
詩吟しぎんのような調子でおっしゃった。この注意が響きわたると、若様がたばかりか、家庭教師の先生がたまでシャキッとなる。皆いずまいを直して自習に身を入れた。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
こと櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさ朗々らう/\たる詩吟しぎんにつれて、何時いつおぼえたか、日出雄少年ひでをせうねんいさましき劍舞けんぶ當夜たうやはなで、わたくし無藝むげいのために、只更ひたすらあたまいたのとともに、大拍手だいはくしゆ大喝釆だいかつさいであつた。
自然くだらぬ考事かんがえごとなどがおこって、ついには何かに襲われるといったような事がある、もしこの場合に、謡曲うたいの好きな人なら、それをうなるとか、詩吟しぎん口吟くちずさむとか、清元きよもとをやるとか、何か気をまぎらして
死神 (新字新仮名) / 岡崎雪声(著)
詩吟しぎん薩摩琵琶さつまびわ、落語、講談、声色こわいろ手品てじな、何でも出来た。その上また、身ぶりとか、顔つきとかで、人を笑わせるのに独特な妙を得ている。従ってクラスの気うけも、教員間の評判も悪くはない。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
オヤとおもつて、窓外まどのそとながめると、今宵こよひ陰暦いんれきの十三月明つきあきらかなる青水せいすい白沙はくしや海岸かいがんには、大佐たいさ部下ぶか水兵等すいへいらは、晝間ひるま疲勞つかれこのつきなぐさめんとてや、此處こゝ一羣ひとむれ彼處かしこ一群ひとむれ詩吟しぎんするのもある。
つぎは個人のかくし芸だったが、その皮切りにも、大河無門が立ちあがって例のせみの鳴き声をやり、大喝采かっさいだった。それにこたえて、興国塾がわからも、その代表である黒田勇が出て詩吟しぎんをやった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)