さと)” の例文
少しの恋愛事件をお起こしになるとたいへんなことのようにおさとしになろうとしたり、かげでも御心配になったりするのを拝見しますと
源氏物語:40 夕霧二 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ひじりさとしていひけるは、汝が聞けるおのが凶事を記憶にをさめよ、またいま心をわが言にそゝげ、かくいひて指を擧げたり 一二七—一二九
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
慈愛のこもった御嶽冠者の諄々じゅんじゅんさとす言葉に連れて、怒りと悲しみにいら立っていた山吹の心も静まったか言葉もなくて俯向いていた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あたかも母親が、子供に教えさとすような口ぶりである。半之助は苦笑しながら、よくわかりました、というふうに頷いた。
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
未だ人間を造らざるに先だち、まづ無量のアンジョ(天人)を造つて、厳にデウスのみを拝さんことをさとたまふ。
ハビアン説法 (新字旧仮名) / 神西清(著)
「どうも君みたいな酒豪しゅごうにはホッケエ部で、太刀打たちうちできるものがいないから、たのむから帰っててくれよ」とにこやかにさとされ、「はい、はい」と素直に立ち上がると
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
「蓑笠を著て人の家に入らぬもの」とさとしたのは、素盞嗚尊すさのおのみことの故事により、物事を断られる意に用いる。この蓑笠は『万葉』の古歌にも見えることは前に引いた歌の例でも分る。
蓑のこと (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
さとされて帰つたものの、やはり家が恋しいと、三日にあげず手紙が来るらしかつた。
木の都 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
度々面会致しては言葉を尽していささとしましたのでございますが、夫は只がぶがぶと酒を飲みますばかりで相手になりませず、妾の恐れと悲しみが弥増つのるばかりでございました折柄
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
非常に貴い人から教えさとされているような厳粛な気持になって来る。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
あの方は、絶えず私たちに、最後まで希望を捨てるな——とさとされましたが、四人の眼は、そこに磁石でもあるかのように、知らず識らず、救命具のある、貯蔵庫の方に引きつけられていったのです。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
なかなか自分のさとす詩ぐらいに感動する人間ではない。
梅颸の杖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そういう二人の間に立って、大日坊は当惑している様子であったが、やがて何やらお菊に向かって、さとすがように説き出した。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こちらが膝を正してさとすことは聞きたがらない。しかしたとえば寝そべって話す気楽な話はよく聞く。あらわれたところよりも隠れてみえないところに興味をもつ。
菊屋敷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
などとさとしておありになるのである。院はお気の毒で、心苦しくて、宮に秘密のあることなどはお知りあそばされずに、自分の不誠意とばかり解釈しておいでになるのであろうとお思いになって
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
努めて優しくさとすように云っても、捕り方の声に驚かされて転倒している老人の耳へは、それが素直にはいりようがない。
三甚内 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「それとこれとは違う」秀之進はきっぱりと押えつけ、五人のほうへ刀をつきつけたまま、さとすような調子でこう云った、「お手前たち、ごらんのとおりもう役目は済んだ、お退きなさい」
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
とおさとしになる。大将も笑って
源氏物語:37 横笛 (新字新仮名) / 紫式部(著)
いまだに小次郎は太刀も抜かず、手に持っていた小扇こおうぎを、前に差しつけ構えていたが、さとすような声でおだやかに云った。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
きっとわがままを慎しんで叔母にせわをやかせるなとさとした。
日本婦道記:おもかげ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
老師はあたかもさとすように、またその改心を願うかのように相手の表情に気を配りながら、凛々たる声でこう云った。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「できればそうしたいのだ」靱負はねんごろにさとした
日本婦道記:二十三年 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そういう泥棒野郎なのじゃ! だによって捨てろとさとすのじゃ! 今夜こそ口先のあいあいではこの長者様は承知せぬぞ! 性根しょうねを据えて返辞をせい!
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「安心いたせ」と急に優しく、貝十郎はさとすようにいった。「わしを信じて織江殿を、残してお前は早く立ち去れ」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
分けてさとしてやったに、それが解らぬとは気の毒なもの。よしよしそれほど撲られたいなら、望みにまかせ取り次いでやろう。逃げるなよ、待っておれ
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
痴人しれものというのはそち達がことじゃ。先夜上野の山下で初めて汝らに巡り合い滾々こんこん不心得をさとしたにもかかわらず、今夜再び現われ出で、押し借りの悪行を働くとは天を
紅白縮緬組 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
河野氏に懇々こんこんさとされたぐらいでは折角せっかくの思い付を止めるはずがない。其夜彼等は脱獄し海上三里を泳ぎ渡り羽田からおかへ上がったが其儘そのまま何処へ行ったものかようとして知ることが出来なかった。
しかしその時、四条隆貞が、さとすようにしみじみと云った。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
桂子は二人へさとすように云った。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
おだやかな声でさとすようにいった。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さとすような声である。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)