見霽みはらし)” の例文
ふらふら孑孑ぼうふらのようだわね……あれから、上へ上へと見霽みはらしの丘になって、段々なぞえに上る処……ちょうどここと同じくらいな高さの処に
……ただし、紅白の蓮華が浴する、と自讃して後架こうかの前から急に跫音あしおとを立てて、二階の見霽みはらしへ帰りました。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
黄昏たそがれに三人で、時雨しぐれの松の見霽みはらしへ出掛けるのを、縁の柱で、悄乎しょんぼりと、藤棚越に伸上のびあがって見ていると、二人に連れられて、私の行くのが、山ではなしに、干潟を沖へ出て
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
廊下に立ちながらかごを命じ、持って来るを、手では、と懐に入れながら、見霽みはらしの湯島の空を眺めている内、いかなる名鳥か嚶々おうおうとして、三たび、梓の胸に鳴いたのである。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一場の見霽みはらしに上り着いて、海面うなづらが、高くその骨組の丈夫な双の肩にかかった時、音に聞えた勘助井戸を左に、右に千仞せんじんの絶壁の、豆腐を削ったような谷に望んで、幹には浦の苫屋とまやすか
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「腰を下ろすとよう立てぬで、久しぶりで出たついでじゃ、やっとそこらを見て、帰りに寄るわい。見霽みはらしへ上る、この男坂の百四段も、見たばかりで、もうもう慄然ぞっとする慄然ぞっとする、」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これは路傍みちばたおのずから湧いて流るるのでなく、人が囲った持主があって、清水茶屋と言う茶店が一軒、田畝たんぼの土手上にひさしを構えた、本家は別の、出茶屋でぢゃやだけれども、ちょっと見霽みはらしの座敷もある。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さか見霽みはらしで、駕籠かごかへる、とおもひながら、傍目わきめらなかつた梶原かぢはらさんは、——そのこゑ振返ふりかへると、小笠原氏をがさはらしが、諸肌もろはだぬぎになつて、肥腹ふとつぱらをそよがせ、こしはなさなかつた古手拭ふるてぬぐひくびいた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大通りの辻……高台の見霽みはらしと、一々数えないでも、城下一帯、この銅像の見えることは、ここから、町を見下ろすとおんなじで……またその位置を撰んで据えたのだそうだから、土地の人は御来迎ごらいごう
たきいはほに、いしだんきざんでのぼると、一面いちめん青田あをた見霽みはらし
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
下向げこうの時、あらためて、見霽みはらし四阿あずまやに立った。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見霽みはらしの野山の中に一つある。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)