能々よくよく)” の例文
さてまた正しきは人の持前とは申せども、人は至ってさときものゆえ、正しからぬ事に感ずるもまたすみやかなり。能々よくよく心得べきことならずや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
此所に能々よくよく眼を御そゝぎ被成、不行と御見とめ被成候時は、ママ論中ニ於て何か証とすべき事を御認被
それもこれも知つてゐながら、阿父おとつさんを踏付にしたやうなおこなひを為るのは、阿母おつかさん能々よくよくの事だと思つて下さい。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
お吉其儘そのままあるべきにあらねば雇いばばにはかねやってひま取らせ、色々片付かたづくるとて持仏棚じぶつだなの奥に一つの包物つつみものあるを、不思議と開き見れば様々の貨幣かね合せて百円足らず、是はと驚きて能々よくよく見るに
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
能々よくよく観ると、岩面よりも岩の上に高坐した蛙の方が留まりやすき故、蠅が留まりに行って啖われるので、これらも大抵野猪と同じく、蠅の飛ぶ道筋が定まりおり、その道筋に当る所々に
一 総じて、飲食の事、能々よくよくつゝしむべき也。もしまば一朝の戦陣に恥あり。もし命を落さば、忠孝二道にそむく。世々までのものわらひ、家門の名折れ、合戦の場において功なきにも劣る。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
濃州に立越え稲葉伊予守に所縁あるを以て暫時かくまはれて居たりしかば、信長の軍立いくさだて能々よくよく見知りてありけるが、今度このたび織田徳川矛盾に及ぶと、浅井を見続みつがずばいよいよ不忠不義の名をこうむるべしとおもひ
姉川合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
能々よくよく御勘弁にて小田村、久坂なんどへもこの文を見せ、仏法信仰はよい事じゃが、仏法にまよわぬように心学本なりと折々御見候えかし。心学本に
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
この竜宮城をしてぞ近づきける、事のてい能々よくよく見るに、二行にとぼせる焼松は、皆おのれが左右の手に点したりと見えたり、あはれこれは、百足蛇むかでの化けたるよと心得て、矢比やごろ近くなりければ
言出しますのは能々よくよくの事でございますから、それに対するだけの理由を有仰おつしやつて、どうぞ十分に私が得心の参るやうにお話し下さいましな、私座興でこんな事を申したのではございませんから
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
交際上手でエンゲージに詫付かこつけ華族の若様のゴールの指輪一日に五六位いつつむつくらい取る程の者望むような世界なれば、なんじ珠運しゅうん能々よくよく用心して人にあざむかれぬようすべしと師匠教訓されしを、何の悪口なと冷笑あざわらいしが
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
能々よくよく此分別これあるべし……
桶狭間合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
しかれば己が生れたる家は先祖の大切なる事は生れ落つるときよりわきまえ知るべけれど、ややもすれば行きたる家は先祖の大切なるに思い付かぬ事もあらん。能々よくよく心得べし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
青臭いどころか、お前、天狗巌てんぐいわだ、七不思議だと云ふ者が有る、可恐おそろしい山の中に違無いぢやないか。そこへ彷徨のそのそひまさうなかほをして唯一箇たつたひとりつて来るなんぞは、能々よくよく間抜まぬけと思はなけりやならんよ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
一方の指揮となれば其任いよいよ重く、必死に勤めけるが仕合しあわせ弾丸たまをも受けず皆々凱陣がいじんの暁、其方そのほう器量学問見所あり、何某なにがし大使に従って外国に行き何々の制度能々よくよく取調べ帰朝せば重くあげもちいらるべしとの事
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)