たか)” の例文
これは驚くねえ人参が牛蒡に成りますくらい蠅がたかります、玉子焼へたかると豆腐入が今度は胡摩入り豆腐に成ります、何うも宜うがす
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
淫靡いんぴ、精根、たぐいの無い饒舌の珍らしさに、後から後からと黒山のようにたかって、盛んに拍手し喝采もしていた聴衆も、あまりの目まぐるしさに
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
橋のたもと佇立たたずんで往来を眺めると、雪に濡れた名物生蕎麦きそばうんどんの旗の下には、人が黒山のようにたかっておりました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
津島さんが会社の倶楽部へ姿を現すと後進が彼方此方あっちこっちから寄りたかる。頗る人気が好い。衣食足って大悟一番しているから、片言隻句まことに能く凡俗に通じる。
小問題大問題 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
肝心の時は逃げ出して今頃十兵衞が周囲に蟻のやうにたかつて何の役に立つ、馬鹿ども、此方には亡者が出来かゝつて居るのだ、鈍遅どぢめ、水でも汲んで来て打注ぶつかけて遣れい
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
とは云っても覚えが有るものでございますから、其所そこは相手が女ながらも心におくれが来て段々後へ下る。すると段々見物の人がたかって
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
桟橋へ上って見て私の第一に喜んだのは、その前の広場にたかって客待ちしている簡素な馬車の幾つかであった。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
橋のたもとにいる半玉を呼んだというものです——到頭、あの日は、皆なでってたかって私を捕虜にして了った
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「私のことも井口が申上げるかも知れませんよ。男同志寄ってたかって女を悪ものにしてしまいますのね」
髪の毛 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
肝心の時は逃げ出して今ごろ十兵衛が周囲まわりありのようにたかって何の役に立つ、馬鹿ども、こっちには亡者もうじゃができかかって居るのだ、鈍遅どじめ、水でも汲んで来て打っけてやれい
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いわんや皆寄ってたかって助けようと努力するんですもの、死ぬ筈があるもんですか? それではお大切だいじ
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
屠手は総懸りで寄つてたかつて、『しツ/\』と声を揚げ乍ら、無理無体に屠殺の小屋の方へ種牛を引入れた。屠手のかしらは油断を見澄まして、素早く細引を投げからむ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ところが、いつの間にたかったものか、赤や白の薔薇の徽章を浴衣の襟、あるいは背広のボタンの孔に挟んだ観光団の数十人が、往来から盛んにカメラを向けて騒いでいた。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
せめて金だけ返してやってくれと申入れましたる所、私に対して聞くに忍びぬ悪口雑言あっこうぞうごん、其の上門弟ども一同寄ってたかって手当り次第に打擲いたし、今でも此の通りあとがございますが
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
屠手は多勢ってたかって、声を励ましたり、叱ったりして、じッとそこに動かない牛を無理やりに屠場の方へ引き入れた。屠場は板敷で、丁度浴場の広い流し場のように造られてある。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「それだのに寄ってたかって渋谷の伯父さんまで引っ張って来てお膳立てをしてさ」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
見付け次第にだましたり剥取はぎとったりして親船へ持運びして、女のいなアかしらの妾、また頭の気に入らぬ女は寄ってたかって勝手にした其の上に、新潟のくるわへ売飛ばすという寸法で、悪事に悪事を重ねるうち
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
縁側えんがわ見透みとおしの狭い庭には男女の村童がたかって遊んでいる。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
幸太郎君の手の平が見舞いました。教官室ですから、皆寄ってたかって大騒ぎです
変人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
捨吉は帳場のわきへ行って立って、皆の激しく働くさまを眺めた。とがった出刃を手にして最初の縄を切る吉どんの手つきを。皆なでってたかって幾条いくすじかの縄を解く腰つきを。開かれる薦包を。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
女「豆じゃアござえません、あれは蠅がたかって居りやすので」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「心配するな、俺はもう何と云はれたつて姦通者に相違ないのだ、皆が皆寄つてたかつて苛めるならもつといぢめろ、もつといぢめろ、一層いつその事ぐいと銀の槍でも突き通せ。」おまへの心はもうその時犇と優しい Tinka John の身体を
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
皆寄ってたかって、悪口を言っているんです。尤も本人は新婚旅行中でした
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
といたずらものは寄ってたかって米沢君に飲ませた。
髪の毛 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と皆寄りたかった。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)