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粉藥
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こぐすり
醫者は
爼板のやうな
板の
上に
黄褐色な
粉藥を
少し
出して、
白い
糊と
煉り
合せて、
罎の
酒のやうな
液體でそれを
緩めてそれから
長い
鋏で
白紙を
刻んで
齒痛が
自から
治まつたので、
秋に
襲はれる
樣な
寒い
氣分は、
少し
輕くなつたけれども、やがて
御米が
隱袋から
取り
出して
來た
粉藥を、
温ま
湯に
溶いて
貰つて、しきりに
含嗽を
始めた。
歸りがけに
玄關脇の
藥局で、
粉藥の
儘含嗽劑を
受取つて、それを百
倍の
微温湯に
溶解して、一
日十
數回使用すべき
注意を
受けた
時、
宗助は
會計の
請求した
治療代の
案外廉なのを
喜んだ。