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砂道
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すなみち
晝見た、
坂の
砂道には、
青すすき、
蚊帳つり
草に、
白い
顏の、はま
晝顏、
目ぶたを
薄紅に
染たのなどが、
松をたよりに、ちらちらと、
幾人も
花をそろへて
咲いた。
磨り減りし敷石は白き
砂道に
連りて
翌日、
雨の
晴間を
海に
行く、
箱根のあなたに、
砂道を
横切りて、
用水のちよろ/\と
蟹の
渡る
處あり。
雨に
嵩増し
流れたるを、
平家の
落人悽じき
瀑と
錯りけるなり。
因りて
名づく、
又夜雨の
瀧。
何か、
自分は
世の
中の
一切のものに、
現在、
恁く、
悄然、
夜露で
重ツくるしい、
白地の
浴衣の、しほたれた、
細い
姿で、
首を
垂れて、
唯一人、
由井ヶ
濱へ
通ずる
砂道を
辿ることを、
見られてはならぬ