真似事まねごと)” の例文
旧字:眞似事
今時この日本で、決闘が行われると云ったら、君なんか本当にしないだろうが、二十日会では、こっそりと決闘の真似事まねごとさえやる。
覆面の舞踏者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しろうとたちでも或る程度までは芝居の真似事まねごとをすることが出来、見物人もその型に依って檜舞台ひのきぶたいの歌舞伎役者を連想しながら見ていられる。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
次郎はその間に、元気よく、夜具を押入れの中へまるめ込むと、流し元へ走り出して、ほんの真似事まねごとだけに顔を洗って来て
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父が開業をしていたので、花房はなぶさ医学士は卒業する少し前から、休課に父のもとへ来ている間は、代診の真似事まねごとをしていた。
カズイスチカ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
彼は自分がミチの為に湯をんでやり、その脇でおけを片付けたり、掃除の真似事まねごとをして居たことを意識して居なかった。
刺青 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
「戦争というほどの戦争じゃありませんがね、いくさの真似事まねごとのようなものですけれども、それでもいくさでした」
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
私許わたしんとこでも、真似事まねごとの節句をします。その栄螺だの蛤だのは、どうしたろうと、何年越かで、ふっと、それも思出すと、きっと何かと突包つッくるんで一所に食べたに違いない。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何も彼も、そう熱中しないでもよさそうではあるけれ共、どうせ、少し真似事まねごと位出来るなら達者になりたいと思う。こんな事にでも私の人にまけたくない気持が現れる。
短歌 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
煙草屋たばこやがあり、文房具なども商うかたわら、見番の真似事まねごとのような事務を執っている老人夫婦があり、それが倉持家の乾分こぶんであったところから、母はその夫婦にいて
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
役者の真似事まねごとまで、なにによらず一と通りのところまでやるので、一廉ひとかどの器量の持主のように買いかぶられるが、内実は我意の強い狭量な気質で、こびるものやへつらうものは大好きだが
鈴木主水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ちつとばかり西洋医せいやうい真似事まねごともいたしますが、矢張やはり大殿おほとの御隠居様杯ごいんきよさまなどは、水薬みづぐすりいやだとおつしやるから、已前まへ煎薬せんやくげるので、相変あひかはらずお出入でいりいたしてる、ところ這囘このたび多分たぶんのお手当てあてあづか
八百屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「どうやら人の真似事まねごとを……」
浴槽 (新字新仮名) / 大坪砂男(著)
陸奥みちのくに半年あまり、下総しもうさの法典ヶ原に、百姓の真似事まねごとして、二年ほどを過ごし、いつまで、土いじりもと存じて、これまで、参ってござります」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから種々雑多な表情動作や活動女優の真似事まねごとの数々、———メリー・ピクフォードの笑顔だの、グロリア・スワンソンのひとみだの、ポーラ・ネグリのたけり立ったところだの
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
今度は油絵の道具を買込んで、絵描きの真似事まねごとをして見たり、馬鹿に気が多い癖に妙にしょうで、これといって本当に修得した科目もなく、無事に学校を卒業出来たのが不思議な位なのです。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
(その悪名隠れもない一人息子の四郎が、頭をまるめ、しおらしい真似事まねごとして、老母はは故郷くにの者をだまそうというつもりであろう。誰が、そのような手にたぶらかされようぞ)
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、足利義満あしかがよしみつ将軍の頃に、武家の婚礼儀式はかなり作法やかましく定められたことがあって、それが風習となって今でも家柄の古い武人は、どことなく真似事まねごとでもしなければ気のすまない風がある。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「このわつぱが、なんの芸じゃ、蛙の真似事まねごとかよ」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いくさ真似事まねごとでもする気なのだろう」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)