-
トップ
>
-
眞直
>
-
まつす
椅子を
下りるとき、
身體が
眞直ぐになつたので、
視線の
位置が
天井から
不圖庭先に
移つたら、
其所にあつた
高さ五
尺もあらうと
云ふ
大きな
鉢栽の
松が
宗助の
眼に
這入つた。
これでも
延びるかと
押へるやうな
仕方に、
堪へて
眞直ぐに
延びたつ
事人間わざには
叶ふまじ、
泣いて
泣いて
泣き
盡くして、
訴へたいにも
父の
心は
鐵のやうに
冷えて、ぬる
湯一
杯たまはらん
情もなきに
幅の
狹い
黒繻子らしい
帶を
些と
低めに
〆めて、
胸を
眞直ぐに
立てて、
頤で
俛向いて、
額越に、ツンとした
權のある
鼻を
向けて、
丁ど、
私の
左の
脇腹のあたりに
坐つて、あからめもしないと
云つた
風に