白羽二重しろはぶたへ)” の例文
友染いうぜんきれに、白羽二重しろはぶたへうらをかさねて、むらさきひもくちかゞつた、衣絵きぬゑさんが手縫てぬい服紗袋ふくさぶくろつゝんで、そのおくつた、しろかゞや小鍋こなべである。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
唯継は例のおごりて天をにらむやうに打仰うちあふぎて、杖の獅子頭ししがしら撫廻なでまはしつつ、少時しばらく思案するていなりしが、やをら白羽二重しろはぶたへのハンカチイフを取出とりいだして、片手に一揮ひとふりるよと見ればはなぬぐへり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「なんだ、こりや白羽二重しろはぶたへぢやないか。こんなものが何で天の羽衣だ。」
竜宮の犬 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
こゝろつて、おもはず、ひたつたひざが、うつかり、そでおも掻巻かいまき友染いうぜんれると、白羽二重しろはぶたへ小浪さゞなみが、あをみづのやうにえりにかゝつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
白羽二重しろはぶたへのハンカチイフに涙をおほへる指に赤く、白く指環リングの玉を耀かがやかしたる、ほとんど物語の画をもるらん心地して、この美き人の身の上に何事の起りけると、豊は可恐おそろしきやうにも覚ゆるぞかし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
苦痛くつうかほの、みにくさをかくさうと、うらおもておなゆきの、あつく、おもい、外套ぐわいたうそでかぶると、またあをかげに、紫陽花あぢさゐはなつゝまれますやうで、白羽二重しろはぶたへうら薄萌黄うすもえぎがすツととほるやうでした。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)