)” の例文
旧字:
二人ににん年歯ねんしの懸隔は、おおむね迷庵におけると同じく、抽斎はをも少しく学んだから、この人は抽斎の師のうちに列する方が妥当であったかも知れない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
この人のいたは、日本でもたれか持っている人があるだろうが、中々なかなか巧いもので、ことに故郷の布哇はわいで有名な、かの噴火口の夜景が得意のものであった。
感応 (新字新仮名) / 岩村透(著)
そのは元祖清信が歿年ぼつねん(享保十四年)の頃より寛延かんえん三年の頃まで続いていでしが故に、時として元祖清信の作と混同しておおい今日こんにちの研究者を苦しましむ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
父の様に、こんな波は昔の人は描かないものだから、法にかなっていないなどという批評は、双方共に、いまかつ如何いかなるに対しても加えた事はなかった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「七役早替。敵討記乎汝」六樹園作、酔放すいほう逸人いつじんの六冊物が世に出たのは文化五戊辰年ぼしんのとしであった。
仇討たれ戯作 (新字新仮名) / 林不忘(著)
夜は山精木魅さんせいもくびの出でて遊ぶを想はしむる、陰森凄幽いんしんせいゆうの気をこらすに反してこの霽朗せいろうなる昼間の山容水態は、明媚めいびいかでかん、天色大気もほとん塵境以外じんきよういがいの感無くんばあらず。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
西王母せいおうぼに頭の凹凸した桃のかいてあるは、その蟠桃のく上等なのです。支那の内地にはその種類に大層大きくって美味しくってそれこそ東方朔とうほうさくが盗んで逃げそうなのもあるそうです。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
とし詩とするには索然さくぜんたるものがあるからである。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
一 たまたま柳里恭りゅうりきょうの『画談』といふものを見しに、次の如きくだりあり。曰く総じて世の中にはかわず多し梁唐宋元明りょうとうそうげんみんの名あるを見ることなき故に絵に力なし。
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ただこの景色を一ぷくとして、一かんの詩として読むからである。であり詩である以上は地面じめんを貰って、開拓する気にもならねば、鉄道をかけて一儲ひともうけする了見りょうけんも起らぬ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今親しくそのるに風景美人共に国貞系統の歌川派の画工とは幾分かその趣を異にする処あり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
これ人物と背景との布局を整頓せしめ、以て純然たる一幅のをなさしむるに便なるがためなり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)