画工えかき)” の例文
旧字:畫工
このおもむきを写すのに、画工えかきさんに同行を願ったのである。これだと、どうも、そのまま浮世絵に任せたがよさそうに思われない事もない。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その時は画工えかきの筆癖から来る特色を忘れて、こう云う頭の平らな男でなければ仙人になる資格がないのだろうと思ったり
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
亭主ていしゅもつなら理学士、文学士つぶしが利く、女房たば音楽師、画工えかき、産婆三割徳ぞ、ならば美人局つつもたせ、げうち、板の間かせぎ等のわざ出来てしかも英仏の語に長じ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
両側へずーっと地口行灯じぐちあんどうかゝげ、絹張に致して、良い画工えかき種々さま/″\の絵をかせ、上には花傘を附けまして両側へ数十本立列たちつらね、造り花や飾物が出来ます。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
が、京伝は画工えかきが威張りたいなら威張らして置いて署名の順位の如きは余り問題にしなかった。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
そこで上手な画工えかきに小翠の像を画かして、夜も昼もそれにいのっていた。
小翠 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
オヤ斎藤さんが画工えかきになるって。こんなめんどくさがりのくせにネ。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
きいてみると、男は北京ほっけい大名府の者で、職は画工えかきであるという。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はじめ、別して酔った時は、幾度も画工えかきさんが話したから、私たちはほとんどその言葉通りといってもいいほど覚えている。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
井深はじっとその口元を見つめた。全く画工えかきの光線のつけ方である。薄いくちびるが両方のはじで少しかえって、その反り返った所にちょっとくぼみを見せている。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かしこまりました、破けて居りますが、あれでも借りてめえりましょう、其処そこうちでは自慢でごぜえます、村へへい画工えかきいたんで、立派というわけにはめえりません、お屋敷様のようじゃアないが
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私は懺悔ざんげをする、皆嘘だ。——画工えかきは画工で、上野の美術展覧会に出しは出したが、まったくの処は落第したんだ。
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「どれ、——あの男か、あの黒服を着た。なあに、あれはね。画工えかきだよ。いつでも来る男だがね、来るたんびに写生帖を持って来て、人の顔を写している」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
本人が変るばかりじゃない、画工えかきのほうの気分も毎日変るんだから、本当を言うと、肖像画が何枚でもできあがらなくっちゃならないわけだが、そうはいかない。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
つれは、毛利一樹いちじゅ、という画工えかきさんで、多分、挿画家そうがか協会会員の中に、芳名がつらなっていようと思う。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そばにいるとしぜん陽気になるような声を出す。三四郎は原口という名前を聞いた時から、おおかたあの画工えかきだろうと思っていた。それにしても与次郎は交際家だ。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
馬鹿、狂人きちがいだ。此奴こいつあ。おい、そんな事を取上げた日には、これ、この頃の画工えかきに頼まれたら、大切な娘の衣服きものを脱いで、いやさ、素裸体すッぱだかにして見せねばならんわ。色情狂いろきちがいの、じじいの癖に。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼は画工えかきに博士があるものと心得ている。彼は鳩の眼を夜でもくものと思っている。それにもかかわらず、芸術家の資格があると云う。彼の心は底のないふくろのように行き抜けである。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
画工えかきでないのが口惜くやしいな。」
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ハハハハ。もっともあなたは画工えかきだから、わしとは少し違うて」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あなた、原口はらぐちさんという画工えかきを御存じ?」と聞き直した。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「おやそう。それだから画工えかきなんぞになれるんですね」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「じゃこの筍も気違の画工えかきが描いたんだろう」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)