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玄子
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げんし
更に
猛進したが、
如何も
思はしくなく、
却つて
玄子の
方が
成功して、
鍋形の
側面に
小なる
紐通しのある
大土器が、
殆ど
完全で
出た。
同月二十八
日には、
幻翁玄子と
余との三
人で
出掛けた。
今日は
馬籠方で
街道を
左に
曲つた
小徑の
左手で、
地主も
異なるのである。
木の
根草の
根が
邪魔をして、
却々掘り
難い。それに
日は
當らぬ。
寒くて
耐らぬ。
蠻勇を
振つて
漸く
汗を
覺えた
頃に、
玄子は
石劒の
柄部を
出した。
右端を
玄子。それから
余。それから
幻翁。それから
左端を
望生。これで
緩斜面を
掘りつゝ
押登らうといふ
陣立。
已むを
得ず、一
時、
松林の
方に
退却したが、
如何も
掘りたくて
耐えられぬ。それで
余と
玄子とは
松林に
待ち、
望生一
人を
遣つて『いくらか
出すから、
掘らして
呉れ』と
申込ましたのである。