獨言ひとりごと)” の例文
新字:独言
非常ひじやうへん心地こゝちがしたので、むしこの立去たちさらんと、春枝夫人はるえふじん見返みかへると、夫人ふじんいま有樣ありさま古風こふうなる英國人エイこくじん獨言ひとりごとには幾分いくぶん不快ふくわいかんじたと
次いで母親は獨言ひとりごとのやうに兄の頭と火鉢の側のお葉の姿とを見くらべて眼を赤くしたのであつた。お葉は、その時そつと次の間に行つて雜誌の頁を繰つたのである。
三十三の死 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
「隣りのお婆さん、何うなすツたかナ。」と獨言ひとりごとのやうにいふ。返事がなかツたので、更に押返して
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
したを掃きながら大抵いつでも獨言ひとりごとをいつてる下男がゐるの、それの口裏から推量したんだけれど、どうやら近いうちに御婚禮がありさうだわ——何しろ旦那さまは常々
狂人日記 (旧字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
『あ、煙草を忘れて來た。』と獨言ひとりごとをした。そして立つて職員室に來てみると、福富は
葉書 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「日本といふ處は實に不思議な國だ。」と自分は流水の話についで獨言ひとりごとのやうに呟いた。「君の議論によると日本文明の精華は社會の不正當な方面から維持されて居たといふ事になる。」
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
讀みながら、彼女は、本を讀むとき大抵の年をとつた女の人がするやうにぶつ/\獨言ひとりごとを呟いてゐた。私が這入つて來ても、直ぐには止めず、或る一節を讀み終らうと思つてゐるらしかつた。
野中のなか古廟こべうはひつて、一休ひとやすみしながら、苦笑にがわらひをして、さびしさうに獨言ひとりごとつたのは、むかし四川酆都縣しせんほうとけん御城代家老ごじやうだいがらう手紙てがみつて、遙々はる/″\燕州えんしう殿樣とのさま使つかひをする、一刀いつぽんさした威勢ゐせいいお飛脚ひきやくで。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
馬鹿ばかツ。』と、玄竹げんちく與力よりき後姿うしろすがたりかへつて獨言ひとりごとをした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
獨言ひとりごとのやうにいひながら、首をかしげて考へてゐた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
不※ふと獨言ひとりごとのやうに、なにかの前兆ぜんてうあらかじつたやうにをんなふ。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
窓の外を振り向いて、お光は獨言ひとりごとを言つた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ヘレンはもう獨言ひとりごとを云つてゐるのだつた。