獄屋ごくや)” の例文
思ひり又も泪にくれをり丑刻やつかね鐵棒かなぼうの音と諸共に松本理左衞門は下役したやく二人下男五六人召連自分じぶん獄屋ごくやに來り鍵番かぎばんに戸口を明けさせ九助を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
嫌疑者を救う方法 をめぐらさなければならぬ。まず前大蔵大臣はあるいは獄屋ごくやに入れられたようにもありまたそうでもないようで分らない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
その後百年ばかりすぎて、大革命の時獄屋ごくやに閉じ込められた仏王ルイ十六世は、ある日密かにその番人の士官に頼まれた。
と、彼らのめられている獄屋ごくやから、無念泣きや嘆声が一せいに洩れたというのは、さもあったろうと思われる。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ソクラテスがアテネの裁判所に召喚しょうかんせられ、有罪の宣告を受けて、獄屋ごくやに投ぜられたときには、アテネの者が皆々あざけり笑って、とうとうあのおしゃべりじじいも、あの年になって
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
れると海辺うみべては、をたいて、もしやこの火影ひかげつけたら、すくいにきてはくれないかと、あてもないことをねがった。三にんは、ついにおかうえ獄屋ごくやれられてしまった。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひしがるゝともおぼ無事なきことは申上難く候と言ひつのるにぞ然ば猶後日の調べと再度さいどどうさげられ長庵三次の兩人は又も獄屋ごくやへ引れける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そして、ながあいだ、その獄屋ごくやのうちで月日つきひおくったのだ。たまたまつきかげが、まどからもれると、そのつきとおうみのかなたのふるさとをしのんだ。あるばんのこと、三にんは、そのまどからした。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「伊丹脱城の夜、殿がおのがれなされた後も、ひとりあとに残った衣笠久左衛門が、ようやく、於菊どのが、あの獄屋ごくやの裏の古池に落ち込んでいたのを見つけ、からくも救い出して来たのでございました」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこの大きな一むねは、獄屋ごくや作りになっている。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)