よく)” の例文
はて、不思議だと思いながら、抜足ぬきあしをしてそっけて行くと、不意に赤児の泣声が聞えた。よくると、其奴そいつが赤児を抱えていたのだ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ブラジルのサンパウロを旅行中そのしもべ大木の幹に腰掛くると動き出したからよくると木でなくて大蛇だったと記した。
見ればつれの男見えぬ故扨こそ奴つに相違なし今に取押とりおさへれんと空鼾そらいびきをかきよく寢入ねいりし體に持成もてなせば曲者は仕濟したりと彼胴卷をほどきてそろり/\と引出すゆゑ半四郎は少しからだ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
二人して息せき急ぎ感応寺へと持ち込み、上人が前にさし置きて帰りけるが、上人これをよくたまうに、初重より五重までの配合つりあい、屋根庇廂ひさし勾配こうばい、腰の高さ、椽木たるき割賦わりふり
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
これはわたくし一箇いっこの考えではござりません、統計学をお遣り遊ばした御仁はよく知っておいでなさる事で、何も珍しい説でもなんでもないんでございます、と申すと私も大層学者らしい口吻くちぶりでげすが
寝付が悪いというお久が今夜はよくねむって、寝坊だと笑われている自分が今夜はうして睡られそうもないので、お菊は幾たびか輾転ねがえりした。
黄八丈の小袖 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
たゝきけれども今日は奉行所へ一同罷出まかりいでつかれにもよくこみ居て何分起出おきいでぬゆゑ裏口に廻り見るに如何さま久兵衞が逃出したる所らしく戸など明放あけはなしありしかばうちへ入て家内の者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すべてかくのごとく小むずかしくもつれ絡んだ蛇の画を、護符として諸多の災害を避くるは、イタリアに限らず、例せば一切経中に見る火難けの符画も、よくるとやはり蛇の画だ。
いきなりに雛形持ち出して人を頼み、二人して息せき急ぎ感応寺へと持ち込み、上人が前にさし置きて帰りけるが、上人これをよくたまふに、初重より五重までの配合つりあひ、屋根庇廂の勾配、腰の高さ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
そこで、祖父おじいさんはの赤児を拾って帰って、燈火あかりの下でよくると、生れてから十月とつき位にもなろうかと思われる男の児で、色の白い可愛い児であった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
自分は両国の橋の上に御大名が御一人のさって御座ったてふ古い古い大津絵節おおつえぶしに、着たる着物は米沢でとある上杉家中に生まれた者で出羽の事をよく知るが、かの地にトウシ蛇という
彼女かれはお内儀かみさんの前に呼び付けられて、お久の口を通しておそろしい役目を云い付けられた。若旦那のよく寝ているところへ忍んで行って、剃刀でそののどへ少しばかりの傷をつけてくれ。
黄八丈の小袖 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この時、遠い頭の上で例の金色こんじきの光が淡く閃いた。市郎は眼をさだめてよくると、穴の入口と覚しき所で何者か火をてらしているらしく、その光に映じて例の金色が見えつ隠れつ漂うのであった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
提灯をかざしてよくると、年のころは十三四の小僧が、この大雨に傘も持たず下駄も穿かず、直湿ひたぬれに湿れたる両袖を掻合せて、跣足はだしのままでぴたぴたと行く姿、いかにも哀れに見えるので
河童小僧 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)