欧洲おうしゅう)” の例文
旧字:歐洲
欧洲おうしゅうの戦争は驚天動地の発展を遂げて、五月には独軍が、和蘭陀オランダ白耳義ベルギー、ルクセンブルグ等に進撃してダンケルクの悲劇を生み
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
後に欧洲おうしゅう彷徨ほうこうの旅で知つたのである。それは伊太利イタリーフロレンスの美術館の半円周の褐色のめ壁を背景にして立つてゐた。
過去世 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
では外国武官たちに、はだかの相撲を見せてもいか?——そう云う体面を重ずるには、何年か欧洲おうしゅうに留学した彼は、余りに外国人を知り過ぎていた。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
重吉が私立のある大学を出たのは大正六、七年のころで、日本の商工界は欧洲おうしゅう戦争のために最も景気の好い時代であった。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
日々海をながめて暮らした。海の魔力まりょくが次第に及ぶを感じた。三等船客の中に、眼がわるいので欧洲おうしゅうまわりで渡米する一青年があって「思出おもいで」を持て居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
同臭のものを尋ねて欧洲おうしゅう大陸を半分位は歩いていましょう。何でも親達おやたちは軍人にするつもりで、十ばかりのやつつかまえてウィインの幼年学校に入れたのだそうです。
欧洲おうしゅう人にとっては恐るべき文字であるはずの古代の漢文、サンスクリット、古代印度のブラフミー文字など、そういうものまで、どうにか大体の意味が解せられた。
『西遊記』の夢 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
が、その人は、宮内省くないしょう調度頭ちょうどのかみをしている男爵は、内親王の御降嫁ごこうかの御調度買入れのために、欧洲おうしゅうへ行っていて、此の八月下旬でなければ、日本へは帰らないのだった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
あれからどのくらいの年月がたったか。日本にも大きな戦争があり、世の中のすべてがあわただしく変化したが、世界にも未曾有みぞうの惨劇があり、欧洲おうしゅう文化に大混乱を来たした。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
最後に、この生活慾の目醒めざましい発展を、欧洲おうしゅうから押し寄せた海嘯つなみと心得ていた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
王さまほどのお強い、卓抜の手腕をお持ちの政治家は、欧洲おうしゅうにも数が少うございます。ポローニヤスは、かねてより、ひそかに舌を巻いて居ります。王さま、おかくしになってはいけません。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
欧洲おうしゅう種の可愛らしいのがいるからと云って、生後三ヶ月ばかりになる雌の仔猫こねこを貰ったのが、リリーだったのである。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
君も知っている通り、千枝子の夫は欧洲おうしゅう戦役中、地中海ちちゅうかい方面へ派遣された「A——」の乗組将校だった。
妙な話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
名はおさわといった。大正三年の夏欧洲おうしゅう戦争が始まってから玩具がんぐ雑貨の輸出を業とした兼太郎の店は大打撃を受けたので、その取返しをする目算で株に手を出した。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それは欧洲おうしゅう文芸復興期の人性主義ヒューマニズムが自然性からだんだん剥離はくりして人間わざだけが昇華しょうかげ、哀れな人工だけの絢爛けんらんが造花のように咲き乱れた十七世紀の時代様式らしい。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それと相手になっているのは、戦後の欧洲おうしゅうを、廻って来て以来、風雲を待っているらしく思われているG男爵だった。その外首相の顔も見えた。内相もいた。陸相もいた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
欧洲おうしゅうに於いてはナチスの全滅、東洋に於いては比島決戦についで沖縄おきなわ決戦、米機の日本内地爆撃、僕には兵隊の作戦の事などほとんど何もわからぬが、しかし、僕には若い敏感なアンテナがある。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
欧洲おうしゅう乱後の世をいましむる思想界の警鐘もわが耳にはどうやら街上あめを売るおきなふえに同じく食うては寝てのみ暮らすこの二、三年冬の寒からず夏の暑からぬ日が何よりも嬉しい。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
亜米利加アメリカ経由で帰国する、夫人はローゼマリーとフリッツとを伴って、来月一旦マニラへ渡り、同地の妹の家にしばらく滞在して、それから欧洲おうしゅうへ立つことにする、と云うのは
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
欧洲おうしゅうの貴族と結婚して、富と爵位との交換を計るように、日本でも貧乏な華族と富豪が頻々ひんぴんとして縁組を始めたことを指摘して、面白からぬ傾向である、華族の堕落であると結論した。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
欧洲おうしゅうの風雲がますます急を告げていることは新聞で見ても明かなので、そう云う所へ妹を一人旅立たせるのは彼女としても不安であり、本家も許す筈がないので躊躇ちゅうちょしていたのであるが
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そのころ世の中は欧洲おうしゅう戦争のおかげで素破すばらしい景気であった。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
前の夫との間に出来た幼い娘が住んでいる英国に渡ることにあって、伯林へ行くのは、旅費その他の関係から、一旦欧洲おうしゅう大陸の一角に辿たどり着いた上で、そこを蹈台ふみだいにしようと云う訳なのであった。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)