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ふださし
ふりがな文庫
“
札差
(
ふださし
)” の例文
江戸は八百万石のお
膝下
(
ひざもと
)
、金銀座の諸役人、前にいった
札差
(
ふださし
)
とか、あるいは諸藩の
留守居役
(
るすいやく
)
といったような、金銭に
糸目
(
いとめ
)
をつけず、入念で
幕末維新懐古談:08「木寄せ」その他のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
和泉屋は蔵前の
札差
(
ふださし
)
で、主人の三右衛門がここへ通りあわせて、鯉の命乞いに出たという次第。桃井の屋敷は和泉屋によほどの前借がある。
鯉
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
でも、根気よく、構えのいい武家屋敷や、でなければ、豪家の
隠宅
(
いんたく
)
——
蔵前
(
くらまえ
)
の
札差
(
ふださし
)
——そんな所を、よって持ちあるいた。
野槌の百
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
枕山がその叔父次郎右衛門の媒介で
蔵前
(
くらまえ
)
の
札差
(
ふださし
)
太田嘉兵衛の女梅を後妻に迎えたのは信州より帰府した後であろう。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
すると、その頃
札差
(
ふださし
)
をしてゐた梅津伝兵衛といふ男が、心ばかりの寄附につきたいからといつて和尚を訪ねて来た。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
▼ もっと見る
当時の蔵前の
札差
(
ふださし
)
や、浜方などとの取引関係から、数算にたけ、
世估
(
せこ
)
に長じていなければならない、いわゆる世渡り上手の人物でなければならないのに
旧聞日本橋:08 木魚の顔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
あれは
札差
(
ふださし
)
の
檀那衆
(
だんなしゅ
)
が
悪作劇
(
いたずら
)
をしてお
出
(
いで
)
なすったところへ、お
辰
(
たつ
)
さんが飛び込んでお出なすったのでございます。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
昔は
蔵前
(
くらまえ
)
の
札差
(
ふださし
)
とか諸大名の御金御用とかあるいはまたは長袖とかが、楽しみに使ったものだそうだが、今では、これを使う人も数えるほどしかないらしい。
野呂松人形
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
下男の圓三郎は、自分の部屋で、
緡
(
さし
)
を作つてゐましたよ。手代の周次郎は、
札差
(
ふださし
)
仲間の凉み船に行つて留守。
銭形平次捕物控:310 闇に飛ぶ箭
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
私の妻の祖母は——と云って、もう三四年前に死んだ人ですが——
蔵前
(
くらまえ
)
の
札差
(
ふださし
)
で、
名字帯刀御免
(
みょうじたいとうごめん
)
で可なり幅を
利
(
き
)
かせた山長——略さないで云えば、
山城
(
やましろ
)
屋長兵衛の一人娘でした。
ある恋の話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
殿様は
能登
(
のと
)
様の
御勘定役
(
ごかんじょうやく
)
。また、奥様のお実家は江戸一のお
札差
(
ふださし
)
の
越後屋
(
えちごや
)
。
顎十郎捕物帳:16 菊香水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「私は
蔵前
(
くらまえ
)
の
札差
(
ふださし
)
の
伜
(
せがれ
)
で名は清一、親は香屋忠兵衛といいます、これは近いうち私の妻になる倫ですが、いったいどういう御不審でお取調べを受けるのか、それを先に聞かして頂けませんか」
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
内緒
(
ないしょう
)
の苦しいのが多く、うわべは大身に構えても、町人に借金があって首が廻らなかったり、また
札差
(
ふださし
)
をさんざん
強請
(
ゆす
)
るようなことが、少なくとも
己
(
おの
)
れの家に限ってはその憂いのないことと
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
かく
分外
(
ぶんがい
)
の
奢侈
(
しゃし
)
は
札差
(
ふださし
)
または
御用達
(
ごようたし
)
商人の輩に多しといえり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
この家は旧
札差
(
ふださし
)
の
作
(
こしら
)
えた家で、間口が四
間
(
けん
)
に二間半の
袖蔵
(
そでぐら
)
が付いており、奥行は十間、総二階という建物で、
木口
(
きぐち
)
もよろしく立派な建物であったが
幕末維新懐古談:24 堀田原へ引っ越した頃のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
御藏前の板倉屋は、
札差
(
ふださし
)
九十六軒のうちでも一流の名家で、富と力とを兼ね備へ、八萬騎の旗本や御家人を、額越しに
睥睨
(
へいげい
)
すると言つた素晴らしい家柄でした。
銭形平次捕物控:310 闇に飛ぶ箭
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
両側の町家から大勢が出て来て、石でも棒切れでも何でも構わない、手あたり次第に叩きつける。
札差
(
ふださし
)
の店からも大勢が出て来て、小桶や皿小鉢まで叩きつける。
牛
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
摺違
(
すれちが
)
いざまに腰を
曲
(
かが
)
めて
急
(
いそ
)
がし気に行過ぎるのは
札差
(
ふださし
)
の店に働く
手代
(
てだい
)
にちがいない。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
で、どこまでも触れこみ通り、金に
大様
(
おおよう
)
で
通
(
つう
)
でお
侠
(
きゃん
)
な
札差
(
ふださし
)
の娘——という
容子
(
ようす
)
になりすまし、仲居を相手に、美食のあとの茶漬好み、枝豆かなにかでお別れの一合をチビチビと飲んでいる。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
桜痴
居士
(
こじ
)
は、現今の歌舞伎座を創立し、九代目団十郎のために、いわゆる腹芸の新脚本を作り、その中で今でも諸方でやる「
春雨傘
(
はるさめがさ
)
」が、市川家十八番の「助六」をきかせて、
蔵前
(
くらまえ
)
の
札差
(
ふださし
)
町人
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
あるとき、豊国は蔵前の
札差
(
ふださし
)
として聞えた
某
(
なにがし
)
の老人から、その姿絵を頼まれました。どこの老人もがそうであるように、この札差も
性急
(
せっかち
)
でしたから、絵の出来るのを待ちかねて、幾度か催促しました。
艸木虫魚
(新字新仮名)
/
薄田泣菫
(著)
紀伊国屋は
札差
(
ふださし
)
で、十年以上も小出家の蔵宿をしていた。
雪と泥
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
左側は、伊勢広、伊勢嘉、和泉喜などいう
札差
(
ふださし
)
が十八軒もずっと並んでいて
豪奢
(
ごうしゃ
)
な生活をしたものである。
幕末維新懐古談:06 高村東雲の生い立ち
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「そんな、大町人の旦那衆は、私どもに掛り合つてくれません。尤も、
札差
(
ふださし
)
の旦那方にも、楊弓をなさる方はありますが、板倉屋のことは聞いたこともありません」
銭形平次捕物控:310 闇に飛ぶ箭
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
だんだん探ってみると、どうも浅草の
札差
(
ふださし
)
の家らしいのですが、こうなると先方でも面倒のかかるのを恐れて、
一切
(
いっさい
)
知らないと云い張っていますから、どうにも調べようがありません。
半七捕物帳:36 冬の金魚
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
札差
(
ふださし
)
の中では、代地の十一屋、天王橋の和泉屋喜兵衛、伊勢屋四郎左衛門など、大商人では日本橋大伝馬町の勝田という荒物商(これは鼠の話の
件
(
くだり
)
で私が師匠の命で使いに参った家)
幕末維新懐古談:21 年季あけ前後のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
さて、師匠の所有の四体の観音は、その後どうなったかというに、一つは浅草の伊勢屋四郎左衛門の家(今の青地氏、昔の
札差
(
ふださし
)
のあと)、一体はその頃有名だった
酒問屋
(
さかどんや
)
で、新川の
池喜
(
いけよし
)
へ行きました。
幕末維新懐古談:34 私の守り本尊のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
“札差”の解説
札差(ふださし)は、江戸時代に幕府から旗本・御家人に支給される米の仲介を業とした者。
浅草の蔵前に店を出し、米の受け取り・運搬・売却による手数料を取るほか、蔵米を担保に高利貸しを行い大きな利益を得た。札差の「札」とは米の支給手形のことで、蔵米が支給される際にそれを竹串に挟んで御蔵役所の入口にある藁束に差して順番待ちをしていたことから、札差と呼ばれるようになった。
(出典:Wikipedia)
札
常用漢字
小4
部首:⽊
5画
差
常用漢字
小4
部首:⼯
10画
“札差”で始まる語句
札差料
札差町人
札差御連中