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朔風
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さくふう
ふりがな文庫
“
朔風
(
さくふう
)” の例文
冬の鋭い
朔風
(
さくふう
)
が、丘の上に、いじけた樹木の裸枝を震わしていた。その風は、彼の頬を赤くなし、彼の皮膚を刺し、彼の血を
鞭
(
むち
)
うった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
いま
彤雲
(
とううん
)
野
(
や
)
に起って、
朔風
(
さくふう
)
天に雪をもよおす。まさにわが計を用うべき時である。姜維は一軍をひきいて敵近く進み、予が
紅
(
くれない
)
の旗をうごかすのを
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
家もなければ立木もなく、薄鼠のただ一色に見える雪の原は、ところどころ
朔風
(
さくふう
)
に傷つけられて、黒い地肌が出ている。
永久凍土地帯
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
それはたとい北国の雪を思わせる
朔風
(
さくふう
)
が落ちてきてもびくともしないというような、落ち着き払って、じっと澄ましこんだ大地の春がありました。
俳句の作りよう
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
もしこれを疑う人あらば請う北海の
朔風
(
さくふう
)
に
櫛
(
くしけず
)
り、寒山の氷雪に浴し、鉄鎖に
繋
(
つな
)
がれてシベリアの採鉱場に苦役する虚無党の罪人に向かってこれを問え。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
▼ もっと見る
朔風
(
さくふう
)
は
焔
(
ほのお
)
を
煽
(
あお
)
り、真昼の空の下に白っぽく輝きを失った火は、すさまじい速さで漢軍に迫る。李陵はすぐに附近の
葦
(
あし
)
に迎え火を放たしめて、かろうじてこれを防いだ。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
余は手袋をはめ、少し汚れたる外套を背に
被
(
おほ
)
ひて手をば通さず帽を取りてエリスに接吻して
楼
(
たかどの
)
を下りつ。彼は凍れる窻を明け、乱れし髪を
朔風
(
さくふう
)
に吹かせて余が乗りし車を見送りぬ。
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
日が暮れてあたりが薄暗くなるといよいよ
朔風
(
さくふう
)
が強く吹きつけ、眼をあいていられないくらいの猛吹雪になっても、金内は、
鬼界
(
きかい
)
ヶ
島
(
しま
)
の
流人俊寛
(
るにんしゅんかん
)
みたいに
浪打際
(
なみうちぎわ
)
を足ずりしてうろつき廻り
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
凜冽
(
りんれつ
)
たる
朔風
(
さくふう
)
は門内の
凍
(
い
)
てた
鋪石
(
しきいし
)
の面を吹いて安物の
外套
(
がいとう
)
を
穿
(
うが
)
つのである。
新年雑俎
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
空気と
峻烈
(
しゅんれつ
)
な純潔との大風が、氷のごとき
朔風
(
さくふう
)
が、毒気を吹き払った。嫌悪の情は一撃のもとに、アーダにたいする恋愛を滅ぼしてしまった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
かの旗を黒竜江上の
朔風
(
さくふう
)
に翻し、馬を呉山の第一峰に立てみずからアレキサンダー大帝、チムールをもって任ずるは、快はすなわち快なりといえども
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
積雪は
沓
(
くつ
)
をうずめ、
朔風
(
さくふう
)
は横なぐりに地を掃いて、
咫尺
(
しせき
)
もわからない。息はつまるし、
睫毛
(
まつげ
)
には雪片が氷りつく。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
朔風
(
さくふう
)
は
戎衣
(
じゅうい
)
を吹いて寒く、いかにも万里孤軍来たるの感が深い。
漠北
(
ばくほく
)
・
浚稽山
(
しゅんけいざん
)
の
麓
(
ふもと
)
に至って軍はようやく止営した。すでに敵
匈奴
(
きょうど
)
の勢力圏に深く進み入っているのである。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
余は手袋をはめ、少しよごれたる
外套
(
がいとう
)
を背に
被
(
おお
)
いて手をば通さず帽を取りてエリスに
接吻
(
せっぷん
)
して
楼
(
たかどの
)
をくだりつ。彼は凍れる窓をあけ、乱れし髪を
朔風
(
さくふう
)
に吹かせて余が乗りし車を見送りぬ。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
ゴットフリートを見送ってもどって来ると、氷のような
朔風
(
さくふう
)
が、町の大門に吹き込んで
渦
(
うず
)
巻いていた。人は皆その強風に向かって頭を下げていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
折から
颷々
(
ひょうひょう
)
たる
朔風
(
さくふう
)
の唸りが厳冬の闇を
翔
(
か
)
け、空には白いものが魔の
息吹
(
いぶ
)
きみたいにちらつきだしていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
遠途の旅客が
朔風
(
さくふう
)
肌を裂き積雪
脛
(
すね
)
を没する万山の中を経過するときには必ず綿衣を重ねざるべからず。実にこのときこのところにおいては綿衣ほど必要なるものはあらざるべし。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
以後、彼の旅路は二十日あまりの山野をいそぎ、やがて
朔風
(
さくふう
)
肌を切るような雪もよいの或る日、見わたす限り
蕭条
(
しょうじょう
)
として
葭
(
よし
)
や枯れ芦の
江岸
(
こうがん
)
にたどり着いていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ちょうど十二月の
中旬
(
なかば
)
である。
朔風
(
さくふう
)
は肌をさし、道はたちまちおおわれ、雪は烈しくなるばかりだった。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その紅顔の子顕家が、今日の国難に
赴
(
ゆ
)
く奥州軍の
総帥
(
そうすい
)
だった。思わぬ任地へ来て二年、北国の
朔風
(
さくふう
)
に研がれた馬上の子は、その生涯の方向を、いまは誰かに決定づけられていた。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それに、家郷を遠く離れて、はや征野の木々にも冬の訪れが見えだしたところへ——
朔風
(
さくふう
)
にわかにふいて、中軍の将旗の旗竿が折れたりなどして、皆不吉な予感にとらわれています。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
戦い半ばの頃から大きな
牡丹雪
(
ぼたんゆき
)
が降り出して、
朔風
(
さくふう
)
凛々
(
りんりん
)
、次第にこの地方特有な吹雪となりだしていたが、今しも姜維の兵は、その
霏々
(
ひひ
)
たる雪片と異ならず、みな先を争って、陣門の内へ逃げ入り
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
朔
漢検準1級
部首:⽉
10画
風
常用漢字
小2
部首:⾵
9画
“朔”で始まる語句
朔日
朔
朔北
朔望
朔方
朔旦
朔太郎
朔平門外
朔蓬
朔郎