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月給
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げつきふ
安之助は
當分の
間、
僅かな
月給と、
此五千
圓に
對する
利益配當とで
暮らさなければならないのださうである。
此の
上なき
滿足を
以て
書見に
耽るのである、
彼は
月給を
受取ると
直ぐ
半分は
書物を
買ふのに
費やす、
其の六
間借りてゐる
室の三つには、
書物と
古雜誌とで
殆埋つてゐる。
銀価の
下落を
心配する
苦労性、
月給の
減額に
気を
揉む
神経先生、
若くは
身躰にもてあます
食もたれの
豚の
子、
無暗に
首を
掉りたがる
張子の
虎、
来つて此
説法を
聴聞し而してのち
文学者となれ。
兄振つたことを
云ふな、
己が手を
曳いてやらなけりやア
何処へも
往かれめえ、
御飯の
世話から
手水場へ
往くまで
己が
附いてツてやるんだ、
月給を取るんぢやアなし、
何んぞと
云ふと
小言を
云やアがる
「
兄さんは
來年になると
月給が
上がるんでせう」
又二三
日して
宗助の
月給が五
圓昇つた。