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波邇賦はにふに到りまして、難波の宮を見けたまひしかば、その火なほえたり。ここにまた歌よみしたまひしく
さいはひに一ぱいみて歇息やすませ給へとて、酒をあたため、下物さかなつらねてすすむるに、赤穴九一袖をもておもておほひ、其のにほひをくるに似たり。左門いふ。
 天の原 ふりけ見れば 渡る日の 影も隠ろひ 照る月の 光も見えず 白雲も い行き憚り 時じくぞ 雪は降りける 語り継ぎ 言ひ継ぎ行かむ 不尽の高嶺は
二、三の山名について (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「多麻河にさら手作てづくりさらさらになにぞこの児のここだかなしき」(巻十四・三三七三)、「高麗錦こまにしきひもけてるがろとかもあやにかなしき」(同・三四六五)
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
あまの原 ふりけ見れば 渡る日の
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
「わが舟は明石あかしの浦に榜ぎはてむ沖へなかりさ夜ふけにけり」(巻七・一二二九)というのは、黒人の歌が伝誦のあいだに変化し、勝手に「明石」と直したものであろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
此年ことし二三享徳きやうとくの夏、二四鎌倉の御所ごしよ成氏朝臣しげうぢあそん二五管領くわんれい上杉うへすぎと御中けて、みたちひやう火に跡なく滅びければ、御所は二六総州そうしうの御味方みかたへ落ちさせ給ふより、関の東たちまちに乱れて
初め大后、日下にいましける時、日下の直越ただこえの道より、河内にでましき。ここに山の上に登りまして、國内を見けたまひしかば、堅魚かつをを上げて舍屋を作れる家あり。
かくて閨房ねやのがれ出でて、庄司にむかひ、かうかうの恐ろしき事あなり。これいかにしてけなん。よくはかり給へと三二七いふも、うしろにや聞くらんと、声をささやかにしてかたる。
ここに天皇見けたまひて、問はしめたまはく、「このやまとの國に、あれきてまた君は無きを。今誰人かかくて行く」と問はしめたまひしかば、すなはち答へまをせるさまも、天皇のみことの如くなりき。
月光を機縁とした恋の歌に、「吾背子がふりけ見つつ嘆くらむ清き月夜に雲な棚引き」(巻十一・二六六九)、「真袖もち床うち払ひ君待つと居りしあひだに月かたぶきぬ」(同・二六六七)等がある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)